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私だけの物語

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回顧
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    ✼••┈┈┈┈┈┈┈••✼ 「今はお菓子の国でお仕事しつつ生活してるけど、そのうち二人で旅するのも良いかもしれないわね」 「旅……ですか…?」 目を丸くして「旅…旅…」と何度も呟くポプちゃんを見てクスリと笑う。 「そうよ、旅よ! やっぱり自分の可能性を勝手に決めるのは良くないと思うのよねー」 「自分の…可能性…」 「そうそう! お金を貯めて二人で小さな飛行船買ったりして…。 それで色んな所に飛び回るの!」 「飛び回る…」 「そうそう!それでたくさーーん楽しい事して、いつか私たちの『家族』に会ったときに自慢してやるのよ…!」 私たちの『家族』…。 もちろんポプちゃんも意味を察してビックリしたような、でもワクワクしてるような表情をした。 この提案にわくわくしているのだから、この子もすっかり秘密結社に慣れてしまってるわよね…、なんて苦笑する。 「とっても素敵ですね…! やはり目標は大きい方が頑張り甲斐もありますし!」 「ふふふ、でしょう? よーし決まりね!まずはお金を貯めて二人で乗れる小さな飛行船を買いましょう!」 「わぁぁ…!私、なんだかわくわくしてきました…!」 「私もよ。とっても楽しみ!」 いつか皆に会えたらとっておきのお話をしてあげよう。 私とポプちゃんの珍道中になるだろう旅のお話。 諦めが悪いって? だってそれが私だもの。 この先の未来も楽しいことも絶対に諦めないわ。 …ポプちゃんと二人でね。
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    どんなに懐古したって、あの楽しかった時にはもう戻れない。 それでもきっと私たちは何度でも思い出すのだと思う。 きらきらと光るカラフルなキャンディーのように、甘く輝いていたあの秘密結社の事を──。
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    だから、彼女が今どんな事を考えているのかわかってしまう。 「……寂しい?」 飛行船の見えなくなった空をまだ眺めている彼女に、こんな事を聞くのは悪いだろうか。 「…正直に言えば。 でも、ここに残る事を選んだのは私自身ですし。 …それに、後悔だけはしたくないので、このお菓子の国で私に出来る限りの事はしようと思います」 彼女は強い。 弱さもあるけれど、きっとそれは他の人に見せないように振舞うし強く在ろうとするだろう。 ……もう、全く強情なんだから…。 でも、そんな彼女の姿に憧れないわけがないでしょう? 「さぁて!これからどんなコトしようかしらね?」 私も一緒にいるわよ、なんて。 少しでも彼女が孤独だなんて思わないようにと笑って言うと、一瞬目を見開いて 「…ありがとう、ございます…」 薄っすらと瞳に綺麗なドロップの涙を浮かべながら、ポプちゃんはとても綺麗に笑った。
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    彼女はとても不思議な子だった。 彼女の側にいれば誰もが癒やされると言うだろうし、実際に彼女の側に居たら私も少しだけ優しい人間になれるように感じられた。 いつもニコニコしていて、物静かで、可愛らしい… でも、それだけじゃない。 ポプちゃんには彼女にしかないと思わされる個性があるし、優しそうに柔らかそうに見えて実は意思はけっこう固かったりする、乱暴な言葉で言えば少し頑固なところもある。 こんなことを自分で言うのも烏滸がましいとは思うのだけれど、きっとポプちゃんと私はお互いに無いものを持っているから憧れて、そしてその考え方に共感して仲良くなっていったんだと思う。
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    「なんだかあっという間でしたね…」 「本当にね…」 みんなが乗っている飛行船が飛び立つのをポプちゃんと2人で手を繋ぎながらお菓子の大地より見送る。 路地裏珈琲という名の秘密結社活動。そこで彼女─ポプカと出会った。 出会ってからものすごく長い日々を共に過ごした、というわけではないのだけれど、波長というか雰囲気というか… 見た目も趣味も性格も違うのだけれど不思議と考え方が良く似ていて、仲が深まるのはあっという間だった。
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    結局、前の時と同じように彼を置いてきてしまった。 それが私の唯一の心残り。 でもいまの彼はたくさんの『家族』に囲まれているし、決して一人ではない。 何と言ったって、あの時話してくれたお兄さんもそばに居るんだから。 もう絵画の時の3人ぽっちじゃない。 生きてさえ居ればいつかきっとまた出会えるんだっていう奇跡みたいな事はこの身を持って知っている。 だから、 「さよなら、なんて絶対言わないわ」 またね、と片手を上げてにっこり笑って。 彼の中の私は、いつでも笑顔でいて欲しいから。 「…モーリィ」 この先何があるかなんてわからない。きっと人生なんてそんな物だから。 いつでも貴方の事を大切に想ってる。 「また、ね…」
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    あの大仕事から少し月日が経った頃、ふとサトウさんが「あねこちゃん、買い物に行こう」なんて言い出した。 二人で車に乗って特に何処へ、と言うでもなく。 カーステレオを付けるとどこか懐かしいようなケルト調の音楽がかかってきて…。 ふらりと降り立った草原で海を見て 「遠い海の向こうに兄弟が居るんだ」 なんて突然寂しそうにポツリと漏らすものだから、普段の飄々としている彼からは想像出来なくって驚いて。 あの時の私は、自分が聖女の絵画の生まれ変わりであるとか、彼が絵画から飛び出してきた、なんて事は全然知らなかったから、その寂しそうな考え詰めているような顔を何とかしたくって 「空での道先案内なんて、私は高いわよ?」 笑って冗談めかして意地悪してみたら 「良い女が高くつくことなんて知ってる」 もっと寂しそうな顔で返ってきた。 今ならわかるわ。 貴方はきっと『聖女であるアンナ』に思いを馳せていたんだって。 「気付いてあげられなくてごめんね」 しんとした部屋の中、静かに響く私の声はきっと誰にも伝わらない。
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    『新しい誰か』と言えば、茶寮チームと初めましてをした依頼はあの夜会から始まったな。 初めての全員参加での作戦。 一人一人が重要な役を担っていたし、あの作戦がきっかけで皆との関係性が少し変わった気がした。 新たな敵に見えた茶寮の登場に、どこか浮足立つ珈琲メンバーの顔は今でも覚えている。 「あの時は色んなピンチを迎えていたっけね…」 各所それぞれ多種多様なピンチを迎え、そしてそれを乗り越え珈琲メンバー達の絆がぐっと深まった、とても大変だったけれど忘れ難い大切な思い出だった。
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    お菓子の国に留まると決めたことを後悔することなんて1つもない。 ただ、思い出があまりにもキラキラと輝いているから…。 「……もう少しだけ感傷に浸らせてね」 きっともう、今はそこに私の居場所は新しい誰かの居場所になっていて、きっとそうやってあの場所は続いて行くのだろうと分かっているけれど。 「わたしは、いつまでも、何処に居ても、路地裏珈琲の結社№1だから…」 思っている事だけは、きっと許されるはずだから。
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    秘密結社に入っての初めての仕事は『ビラ配り』だった。 困っている人をお助けして、チラッと路地裏珈琲と描いてある帽子のロゴを見せる…とか、そんな内容だったような気がする。 みんなで「えー!何それー!」「それが秘密結社のすることーー?!」なんてブーブー文句を言ってはマスター達に怒られたりタナカさんに宥められたり……。 そして、その依頼の時に出会った初めてのお客さん。 未知なる未来に胸が踊るようなドキドキとわくわくを詰め込んで、自転車を漕いで全力疾走して……。 もうそんな歳じゃあないけれど、あの時は確かに私にとって青春そのものだったのかもしれない。 「1つ1つが大切な思い出になってるわね…」
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    「運命、か……」 有り得ない、とは言い切れない。 当初、集まったのは私を含めた10人のメンバー。 年齢や性別、背格好もバラバラで性格にだいぶ個性が強い面々だなと思った記憶がある。 何度も言うが、最初は不安が大きかった。 もちろん好奇心もあったし先の事にわくわく胸を高鳴らせていたのも本当だ。 けれど、結社になったメンバーを見て自分はここでちゃんとやっていけるのか? と当時は不安の方が大きかった。 「今だから言えることね…」 カチャンと音を立ててソーサラーからカップを口元へと運び、今しがた口に出した言葉もろとも失くすように珈琲を一口だけ飲み込んだ。
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    「僕らと一緒に、ひと稼ぎしようじゃないか。 覚悟を決めた人から、お手元のカップをどうぞ掲げて。 仲間の契りは乾杯でする習わしだ。 この珈琲が冷めちゃう前に、良い返事が聴けるといいんだけど」 そんな物騒な文句から始まった秘密結社 路地裏珈琲。 いい話があるんだけど、アルバイトしない?、絶対君にとっていい経験になるよ…… 今改めて思い返してみるとなんて胡散臭い誘い文句だろうか。 あの頃、誘われるがままに付いていった自分を怒鳴りつけてやりたいくらいに軽率だ。 ─平和な日常には少しのスパイスが必要だ─ そんな事を言っていたのは何かの本の作者だったのか……詳しくはもう思い出せないけれど、あの頃の私は毎日繰り返される日常に確かに飽き飽きしていて、何度か通ったその珈琲屋さんの怪しげな誘惑に自分から乗ったのだ。 少しの不安と、未知の体験が待っている期待からの好奇心。 そんな幼少の頃に戻ったような気持ちで結社の一員になる事に決めたのは、今にして思えば運命のような強い引力に引かれていたのかも知れない。
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    「夜色の珈琲ゼリー」 ぽつりと呟く声に答えてくれる声は無いけれど、思い返すだけであの頃のあの場所、あの空気を思い出せる。 あの頃はスズキさんは寡黙で、サトウさんはニコニコ愛想の良い店員だと思っていたなぁ。 私のオーダーに合わせて作ってくれた珈琲ゼリー。 それは私の物語の始まりのスイーツだった。 エチオピア産のフルーティな豆を使用して、苦味だけじゃないどこか華やかささえ感じるフレーバーになったその珈琲ゼリーは、精一杯の大人ぶった私を見透かして作られたものなのかも知れない。 「あの時歌った歌も、隣で静かに聴いてくれていた貴方の表情も、全部私の宝物ね…」 全ての始まり、今思い返せば、そのゼリーの味そのものが私の旅の全てを表しているのかも知れないと思った。
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    「色々あったわぁ~……」 ふらっと立寄った路地裏にひっそりと佇む珈琲屋さん。 新しいお店を見つけて嬉しくなって、少しだけ寄り道したつもりが 「…いつの間にやら、大きな大きな寄り道になっていたわね…」 少しだけ思い返してみてクスッと笑みが溢れる。 そう、私の長いようで短い、幸せだったり辛苦であったりまるで青春のような日々は、あの時の小さな珈琲屋から始まった。