三人寄れば…
Goose house
三人寄れば…
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「皆さん!!集まりましたね!…ゴホン!では、会議を開始します!」
え?といった顔の二人がシノの前で座っている。ここはキリエの出張所から近くのカフェ、お昼休みの時間だ。
「えっと…初めまして」
「あ!あはは…初めまして!!海のエリアから遥々ようこそ。麓のエリア、キリエ担当のニフと申します」
ニフからの丁寧な挨拶に友人は慌てて自己紹介を始める。それをニコニコと見つめるホビットの笑顔。
挨拶もそこそこに、ニフと友人は困惑した顔でシノを見詰めた。シノは笑顔を変えずに胸を張る。
「実はずっとこうやって作戦会議したかったんですよね!この方が私の先輩!学生時代の時から色々な話を聞いてくれてたんだよ」
すっかり仕事仲間の枠を超え、仲良くなった同僚の友人。シノから沢山の話を聞いていた。その中によく出てくる人物…丸メガネのちょっとドジで頼りないけどかけがえのない理事会の先輩…
「あぁ!ニフ先輩…!お話は聞いてますぅ!」
え?シノちゃん、一体何を話したの?…ニフは苦笑いを浮かべながらシノに目で訴えたが、シノは自分の話をしだした。
「そうなの!ニフ先輩はどんな話も聞いてくれて、一生懸命考えてくれるし…素敵な片思いのお話も聞かせてくださいましたものね!そんな先輩にお願いです!」
シノは真剣な眼差しをニフに向けた。
「私たちの恋愛相談を聞いてください!」
え!!と悲鳴に似た声がニフから上がったが、友人も目が輝きだし、私からもお願いします!!と頭を下げられた。住民の相談を受けるのが仕事の理事会員、お願いしますという言葉にはどうしても弱い。
「いいですけどぉ…あう…で、でもぉ…私自身、恋愛なんて殆どしてないから力にならないような…」
ニフの弱音も興奮した二人には届かなかったようで、シノと2人、手を取り合って喜びあっている。
「フムフム…気になる相手…お二人共私お会いした事ありますね。ご友人の好きな上司の方は私と同期の方ですね、良く好で私の仕事の手助けをしてくれてました。懐かしいなぁ」
「えー!?ホントですか!?あーでも分かるなぁ…彼、凄く面倒見が良くて優しいんです!」
きゃーと黄色い声を上げて両手を頬に当てて悶えている友人。幸せそうな友人の顔にシノもニコニコしてしまう。
「シノちゃんの好きな先輩は…多分かなり忙しいのでは?前に理事会の会議にも呼ばれていて…期待される程の実力があるのは喜ばしいけど、忙しそうで心配になります」
「そうなんです…はぁ、職場に行っても先輩の姿がなくて…ガッカリする日もあるんですよね…あ!いや、先輩に会いに仕事してる訳じゃないですよ!!」
シノはお下げを暴れさせながらブンブンと頭を横に振る。
まさかシノちゃんに友達が出来て、私に相談を持ちかけてくれるなんて…そして、こんな時間が過ごせるなんて…顔を赤らめた2人を前に優しくニフは微笑んだ。
「お待たせしましたぁ、世界樹のお茶と季節のケーキ、クラナッツのクッキーですぅ」
リスの獣人がお盆に乗った注文品をテーブルに並べる。海のエリアから来た友人は珍しそうに注文品を眺めると、一口頬張る…
「…んん!美味しい!!海のエリアと違って、ナッツやベリーが沢山…!お茶も海のと味が違う!」
友人はその美味しさに手が止まらないようだ。話し合いは一時中断して、ティータイム。研修生時代はよくこうやってお茶を二人で飲んだよね…ええ、ニフ先輩と沢山お話して、とっても楽しかったです…ニフとシノの思い出話が花開き、それを聞いて友人が質問を投げかける。2人の話は3人の会話になり、まるで昔からこの3人で話をしていたかのように、会話は楽しく続いてゆく。
「シノちゃん、最初は仕事に悩んでとても疲れた顔良くしてましたよね」
「そ!それはニフ先輩もですよ!いっつも書類の束に囲まれてて」
「え!?まさか出張所の仕事、いつも1人でやってるんですか!?うわぁ…流石先輩…海の本部は何人も理事会員が居るのに…!」
そうなんだよねぇ…とニフ。会話は途切れることなく続いていく。
「シノちゃんが理事会員になってからまた一人でお昼を食べるようになったので…今日は本当に楽しいです!またこうやって皆でお昼食べたいです…」
ニフは照れくさそうに俯きながらもはっきりした声で思いを告げた。
「私も!めちゃめちゃ楽しいです!海では聞けない話たくさん聞いたし!呼んでくれたらいつだって行きますよ!シノに声かけてくれれば時間作るし、もし良かったらほかの仲間も連れて…」
3人は一斉にハッとした顔をした。…まだ付き合ってもいない想い人、二人きりのデートはハードルが高いが…
「上司にとって同期のニフ先輩…先輩にとっては後輩のシノを指導してくれた人…」
5人で食事会を開く…のならば、ハードルはそこまで高くないかもしれない…!
「「ニフ先輩!!」」
シノと友人の声が重なった。どうやら、この会議、結論が出たようだ。
「うう…責任重大です…でも、キリエでの勉強会という名目で、お二人に何とか声かけてみます…!」
ズレたメガネを直しながら、震えた声でニフは答えた。お昼休みを終えたニフは二人に別れを告げると、出張所へと消えていった。
「な、なんか悪いことしちゃったかなぁ…」
残ったシノと友人は顔を見合せ苦笑い。
「でも、私シノがキリエに遊びに行こうって誘ってくれて、すっごく嬉しかった!それで、凄く楽しかった!!から、きっとこの作戦もうまく行くよ!」
友達は満面の笑顔で言う。
「楽しかった…?まだまだ!案内したいところはまだまだあるんだから!今日はせっかくの休みだもん、付き合ってもらうからね!」
二人は楽しそうに手を繋いで店を出ていった。
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勉強会の作戦を立てたようです
(炎のマナを使った場合、この作戦は実行される)
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