【M32】思いきりゃんせ【石川1】
吹雪(ふぶき)
【M32】思いきりゃんせ【石川1】
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金沢市才田町
伝承:中田ふさ/1910年生
採集:小林輝治/1977年
採譜:中沢静子/1977年
収録:全集10上
キー:譜面C/歌唱G(4音下げ)
譜面テンポ:♩=60
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思いきりゃんせ牧山(まっきやま)の太郎兵衛(たろべ)
死んだおなべが泣きゃ来るか
泣いてくれるな親ない子供
親はござれど極楽に
からすなんで泣く女郎屋(めらや)の屋根に
金も持たずにカオカオと
鳴くはにわとり騒ぐはからす
泣けば餌差(えさし)がさしに来る
子守りかわいや冱寒(ごかん)の冬も
人の軒端で日を暮らす
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思いきりゃんせ:思いきりなさい、くよくよ考えるな
牧山の太郎兵衛:全集によれば「金沢の牧山町に池があり、昔、近くに住んでいた太郎兵衛の娘おなべが、池の蛇神に懸想され身を投げて死んだという話が伝わっている。今その池はおなべ池と呼ばれている」。懸想され=想いを寄せられ
親ない子供:守り子は自分のことを“親のない子”と呼ぶことがある。実際に親を亡くした場合と身近に親がいない=守ってくれる保護者がいない──の意味があったのでは
餌差:餅竿(もちざお)などで小鳥(鷹の餌)をとる人
冱寒:凍りつく寒さ。子供の言葉ではなさそう。大人の民謡から転用か
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石川は子守唄22曲、うち6曲が守り子唄。関東以北では岩手(23曲)福島(23曲)に次いで子守唄の数が多く、守り子唄の数も福島(9曲)に次いで多くなっています。原曲の多くは地元民謡と思われますが、転用の域をこえた独自の守り子唄となっているのが印象的。「守りべ」と呼ばれた守り子たちの豊かな精神世界が窺(うかが)われます。一曲目のこの唄は昔話風ですが、後から加えた守り子唄パート(一字下げた部分。冬濤の推測です)も、それほど強引に突っ込んだ感じがしません。それにしても……「金も持たずにカオカオと」というのは気の利いた皮肉だなあ……と(笑)。譜面は3/4拍子です。
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追記。この唄の「子守りかわいや」という歌詞には個人的に違和感というか、他の守り子唄とは違う響きを感じました(冬濤が知らないだけで類歌詞はあるのかもしれませんが)。これは守り子自身でなく、守り子経験のある“姉さま”とか、守り子を見ていた大人の言葉ではないでしょうか。あくまでも推測です。
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