カガリビト
The Epic of Harmosphere 第1章
カガリビト
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第2節 孤独なる生、願わくば束の間の永遠を
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東の国に集いし7人の魔女と1人の魔女見習い
少女が齎した新たな時代の予感に
参加者は恐れ、怯え、疑い、或いは期待する
虚栄の城で繰り広げられる群像劇──
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ソルとルナの間に立たされたヴィオレット。そしてそれを囲むように、1歩ずつ前に出た5人の魔女たち。7人の魔女と1人の魔女見習いが集まった豪華な部屋はぴんと張り詰めた空気に包まれていた。
貴族たちの魔女に対する恐怖、疑念、緊張。そういった感情がヴィオレットに流れこみ、脳の芯をじわじわと揺らしていく。
アリソンが言うにはこれがヴィオレットの魔女1人1人が持つ独自の魔法……「固有魔法」の影響らしいが、まだ未熟なヴィオレットの固有魔法は不安定で上手くコントロールができない。
思わずうめき声をあげそうになったその時、重々しい雰囲気を打ち消すようにルナがぱちんと手を打って弾んだ声をあげた。
「さて、ヴィオレットの弟子入り先じゃが!本来なら育ての親である南の国のアリソンに任せるのが適任かと思ったりもしたが……」
「若い魔女には様々なことを学んで欲しいと思っての。西の国のアンネに預けようと思う」
「……何ですって?」
ルナとソルの言葉に、アンネと呼ばれた魔女が俯いていた顔を弾かれたようにあげる。眼鏡の奥では前髪に隠れていた美しい緑色の瞳が困惑に揺れている。ヴィオレットは思わずその色に見とれてしまった。
「何故私が……魔術科学について学ばせたければソフィアがいるでしょう……」
「ん~そうなんじゃけど」
「ソフィアにはもう手のかかる子が一人おるからのう?」
「なになに?ソフィ、誰の話?」
「アビゲイルは黙ってて下さい」
「んふふふっ!はぁ~い!」
ソフィアに睨みつけられるが、アビゲイルは気にした様子もなくけらけらと笑う。そしてその場でくるりと一回転するとその姿はまるで陽炎のように消えてしまった。
「アビゲイルは相変わらずじゃのう」
「気分屋で困ったものじゃ」
「ソフィアがアビゲイルの世話で手一杯なのはよく分かっているけれど、だからといって別に私でなくても……」
アンネが困った様子なので、ヴィオレットの方も何だかとても申し訳ない気持ちになる。
「あ、あの、ソル様ルナ様!アンネ様のご迷惑になるなら、無理を言うのは……」
「あ、いえ、迷惑とは言っていないけれど……」
「それならば決定じゃな!」
「弟子入りおめでとう~!」
「ち、ちょっと……!?」
「えええぇっ?」
ということで半ば強引にヴィオレットの弟子入り先が決まってしまったのだった。
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これだけでも目が回るような展開だったのに、お披露目はまだまだ終わらなかった。
「こちらは北の国の女王陛下。先王亡き後国をまとめておられるのじゃ」
「そしてこちらは南の国の国王陛下。確か50年くらいじゃっけ?国を治めておる」
「こちらが西の国の国王陛下。ついこの間王座につかれたばかりじゃ」
「そして我らが東の国の宰相殿じゃ!まだ16歳と幼い国王陛下に代わり、国政を取り仕切ってくれておるんじゃよ」
「は、初めまして……」
いきなり4つの国のトップに次々と引き合わされたヴィオレッタはぎくしゃくと礼をする。
新しい魔女に対する疑いや期待。未知の力に対する恐れと憧れ。ヴィオレットの中に感情が流れ込んでくる。いや、紹介された四人だけではなく式典に参列し貴族たち皆が同じような感情を抱いている。
(ううう、頭が割れそう……)
眩暈がしてよろめきかけると、ソルがヴィオレットの背中小さな手で支えてゆっくりとさすってくれた。
「ヴィオレットや、顔色が悪いようじゃな」
「ごめんなさい……ちょっと気分が……」
「そういえばアリソンがヴィオレットは固有魔法の影響でたくさん人がいる所が苦手だと言っておったな。可哀想なことをしたのう」
「いきなり沢山の人に会わせてしまってびっくりしたじゃろ?すまなかったのう。外で風にでも当たっておいで」
「あ、ありがとうございます……」
2人に礼を言ってテラスに出ると、外は暗くなってきていた。冷たくなった風がで火照った頬に心地良い。
「ふぅ……疲れた……」
口に出してみると、思いの外疲れきった声が出たことに自分でも驚いてしまった。
魔女を怖がったり嫌がる人間がいることは知っていたけれど、今日のお披露目でそれを嫌という程痛感した。きっと今まではアリソンがああいう感情から守ってくれていたのだ。
でも、これからアリソンは側にいない。1人で西の国で頑張らないといけない。知らない国で知らない人たちに囲まれて……。
「……≪展開(テイク·アウト)≫」
ポケットから杖(ステッキ)である鍵を取り出して魔法陣を描きながら呪文を唱えると、淡い光と共に桃色の花の細工が施された小箱がふわりと姿を現す。ヴィオレットにも使える初歩的な収納魔法だ。
宝石箱に鍵を差し込んで開けると、中から「しあわせのやさしいまじょ」と書かれた古びた絵本を引っ張り出す。母が残してくれたこの小箱は魔法がかかっており、どんな大きなものでも中に入れることができる。絵本を開くと人間たちに囲まれて微笑む魔女が柔らかい色彩で描かれている。
母もアリソンと同じく、こんな風に多くの人間に慕われる偉大な魔女だったらしい。戦争の時には自分の危険も顧みず故郷の南の国を守ったという勇敢で心優しい魔女。人づてにしか聞いた事がないけれど……ヴィオレットにとって母親は憧れであり目標だ。
ヴィオレットはその絵をじっと見つめたあと、絵本に縋るように抱きしめた。
「私も、こんな風になれるように……頑張らないと……」
それなのに自分を奮い立たせようと呟いたはずの言葉は弱々しく震えていて。ヴィオレットは絵本を胸に抱いたまま唇を噛み締めたのだった。
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🧸ソル・アルレッキーノ(cv.あんに。)
🎀ルナ・アルレッキーノ(cv.あかりん)
✒️アンネ・クリストファー(cv.中条瑠乃)
📓アビゲイル・ヘルキャット(cv.憂沢時雨)
🕛ソフィア・クラーク(cv.はいねこ)
🗡ジャンヌ・フォーサイス(cv.なぎ)
💍アリソン・フローレス(cv.香流 紫月)
🗝ヴィオレット・ホワイト(cv.朔)
📓水面に映る ツギハギだらけの身体
🕛空蝉に問う これは夢か幻か
🧸くたびれては眠り 赤い夢を見る
🎀篝火は倒れて 空を焦がす
🗝急き立てられるように ゆらり歩き出す
✒️孤独な太陽(ほし)の様に 繰り返して
🗡辛うじて 💍留める
🗡形を繋ぐ 💍敢え無い 🗡💍魔法は
all:掛け替えの無い命の影
🗡💍動かぬその右手には
🗝✒️クチナシの花束を
🧸🎀地に返る魂に
📓🕛捧ぐはなむけ
all:残された世界には 縁なしの絶望と
願わくば暫くの永遠を
ハモリ担当:✒️
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☪︎第1章 プレイリスト☪︎
①→https://nana-music.com/playlists/3770346
②→https://nana-music.com/playlists/3840176
☪︎素敵な伴奏ありがとうございました☪︎
まさ様
https://nana-music.com/sounds/00da1983
☪︎ 𝕋𝕒𝕘 ☪︎
#魔女ソル #魔女ルナ #魔女アンネ #魔女アビゲイル #魔女ソフィア #魔女ジャンヌ #魔女アリソン #魔女ヴィオレット
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