灰色のサーガ
✒️アンネ&🗝ヴィオレット
灰色のサーガ
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第2節 孤独なる生、願わくば束の間の永遠を
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(泣かないで……人生には別れもあるけれど、きっと新しい出会いもあるはずよ──)
温かな手が頭を撫でる。
これは誰の声だっただろう……貴女は誰……?
(だから前を向いて、強く生きてね)
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ふっと意識が浮上する。
半分動かない頭で周りを見渡すと、どうやらあのままテラスの椅子に座ったままうとうとしてしまったらしい。さすがに体が冷えきってしまったらしく、手足が自分のものじゃないみたいに固くなってしまっている。
肌を撫でる冷たい風に思わずぶるりと身震いをしたとき、テラスの扉が静かに開く音がした。
「あっ……!」
「……!」
扉を開けたのはアンネだった。ここにヴィオレットがいることは知らなかったのか、微かに息を飲み、眼鏡の奥でエメラルドのような美しい瞳が見開かれた。
ヴィオレットは思わずその色に目を奪われる。でも何処か懐かしい気もする──。
「……ソル様とルナ様があなたの姿が見えないって心配していたわ」
「あっ!そうだ、私途中で抜けてきて……」
アンネの言葉にハッと現実に引き戻されて、ヴィオレットは慌てて立ち上がる。そのせいで膝に置いていた絵本が滑り落ちてしまった。しまった。絵本をしまっておくのを忘れていた。
「それは……?」
「あ、えっと……これはお母さんが私に残してくれた絵本なんです。疲れたり、悲しくなったりした時にはこの本を読むと頑張ろうって思えるから持ち歩いていて……あの……皆のことを助けてくれる魔女のお話なんですけど……」
説明しながらだんだんと恥ずかしくなって、声がしりすぼみになっていく。12歳にもなって絵本を持ち歩いているだなんて、すごく小さな子どもみたいじゃないだろうか?子供っぽいと呆れられてしまったかも。頬が熱くなって、思わずヴィオレットは俯いた。
「……そう、疲れたの?まぁ、そうでしょうね……人が多かったし、人間たちに慕われているアリソン様の周りと違って、貴族には魔女に否定的な者も多いでしょうし……」
そっと俯いた頭を撫でられた。
思いのほか子どもを撫で慣れたような仕草の指先からふわりと優しい感情が流れ込んでくる。労りと心配。さっきまでヴィオレットに流れ込んでいた貴族たちの感情とは違う、染み入るような優しさがヴィオレッタの心に広がる。
「え、えっと……」
「待って。貴女、体が冷えきってるじゃない!」
ヴィオレットの顔が冷たいことに気づいたらしいアンネは、慌てた様子で呪文を唱える。するとどこからともなくふわふわのブランケットが姿を表し、ヴィオレットの体を包んでくれた。
「これから西の国に来るなら、体調を崩したら大変じゃない……ただでさえ南の国と違って西の国は気温が低いし、冬は冷え込むのに……」
ヴィオレットの体にしっかりブランケットを巻き直しながら、アンネは呟く。
「いえ、ソル様とルナ様はあんなことを言っていたけれど……。私はそもそも師匠には向いてないから、弟子なんかとるべきじゃないわ。アリソン様の方が朗らかだし、模範的な魔女でしょう?きっと私の所なんか来ないで、アリソン様の元で魔法を学んだ方がずっと良い……」
不安。自己嫌悪。そして心配。負の感情だけど全然嫌な感じじゃない。むしろ心の奥を温めてくれるみたいだった。
(あぁ、この人は優しい人なんだ……)
アリソンのように全てを照らし出す眩さは無いけど、真っ暗な夜道を優しく照らしてくれる月みたいな優しい人。
「あの、確かにアリソン様は素敵な魔女です」
「なら……」
「で、でも!アンネ先生がご迷惑じゃないなら私はアンネ先生の弟子になりたいです!!」
「……物好きな子」
そう呟いて戸惑ったように繋がれた手はとても温かくて、ヴィオレットは心から笑みを浮かべたのだった。
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🗝月明り照らす小道を通り抜け
✒️優しさの裏に隠れた甘い毒に
🗝✒️惑わされないよう
✒️守りたいものを守る強さ
🗝いつか必ず手に入れると信じて
🗝✒️新しい明日へ行くよ 喜びも絶望も越えて
✒️急ぐ その先へ
🗝✒️正しい何かが出会い まだ見えない道で続く
🗝私だけの物語
🗝✒️誰も見たことのない その一ページを
ハモリ担当:✒️
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🗝ヴィオレット・ホワイト(cv.朔)
魔力に目覚めたばかりの新米魔女。幼い頃に同じく魔女だった母親を亡くし、アリソンに育てられた。大好きな絵本に出てくる魔女のように、そして亡き母のように人を幸せにする魔女を目指している。
【好き】スミレの砂糖漬け、絵本
【嫌い】負の感情
【特技】掃除
【ステッキ】鍵
【固有魔法】
まだ未熟なため相手の感情がぼんやりと読み取れるということしか分かっていない。
✒️アンネ・クリストファー(cv.中条瑠乃)
100年前のハルモニアム大戦以後、西の国の森の奥深くで「副業」をこなしながら一人で静かに暮らしている。ルナとソルの判断によりヴィオレットの師匠となる。面倒見が良く、不器用な所もあるが心優しい性格。
【好き】静寂、思い出
【嫌い】人間関係、喧騒、シフォンケーキ
【特技】切り絵
【ステッキ】ペン
【固有魔法】
「美しき思い出を語ろう(ロング·ロング·アゴー)」
ペンで空中に書いた事象が現実になる魔法。実現が難しい事象ほど魔力が大量に消費される。
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☪︎第1章 プレイリスト☪︎
①→https://nana-music.com/playlists/3770346
②→https://nana-music.com/playlists/3840176
☪︎素敵な伴奏ありがとうございました☪︎
yuya様
https://nana-music.com/sounds/05b6af08
☪︎ 𝕋𝕒𝕘 ☪︎
#ChouCho #灰色のサーガ #魔女の旅々 #アニソン
#魔女アンネ #魔女ヴィオレット
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