アサガオの散る頃に
ソルベ♂
アサガオの散る頃に
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・儚い雰囲気の癒し系少年。笑う度にチラチラと氷が舞うため涼しい。しかしそれで涼をとられるのは癪。そういう人にはキツいしっぺが待っている。
『……少し顔色が優れないようですが、大丈夫ですか?ソルベを食べて、スッキリしてください!』
俯くようにしていた男を覗き込むように見た少年は、スっとガラスの器を指で押す。赤とも濃いピンクともとれる半球は、温度差で器をくもらせていて氷の上に乗っているようだった。そうか、肉の前にシャーベットを挟むんだった。口に運んで舌の上で溶かせば、酔いも覚めるような冷たさの後に、じわじわと甘酸っぱさを感じて少しずつ気分が落ち着いていく。何も、何も怖がらなくたっていい。もうアイツはいない。見つかるわけもない。誰もあそこには近づかない。そう考えているとだんだんとさっきまでの恐れは消えて、もっとゆっくり最初から味わって食べれば良かったとさえ思うようになってきた。残りのメニューは味わって食べよう。すっかり空になったガラスの器を少年の給仕にさげさせる。彼を見てにこりと微笑めば、無邪気な笑顔が返ってくる。チリ、と冷たい感覚がして頬に触れると、氷のつぶがついていた。がっつくように食べてもいないのに何故なのか。もう一度少年の方を見ると、彼はいなくなっていた。
#洋食屋さかもと
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