斜め45度の機嫌
すりぃ
斜め45度の機嫌
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「はぁー…誰だよぉ!実験室をこんなめちゃくちゃにして!おかげで商品も作れない!」
あ!それは私だったか!!あははは!…と真っ黒に焦げた部屋で一頻り笑う。
「…てぇ…そんな事してる間に部屋綺麗になんないかな…なんないよね。うん、知ってる…」
大きなため息と共に重い腰を上げて掃除をする。一通り終われば次に必要なのは…
「材料も全滅って…本当に誰がやったんだよぉ…あぁ、自業自得って言葉はなんて残酷なんだろ!私が世界を作れるなら、真っ先にこの言葉を消し去ろう!うん」
アルマの愚痴は止まらない。止まらなさ過ぎて最早誰かと会話をしているかのようだ。煤で汚れたヨレヨレの白衣の上に大きなカゴを背負う。まるで農民かのようだが、外見など全く気にせず、材料を取りに世界樹へと向かった。
世界樹の葉はその強い生命力と魔力を全身にたっぷり蓄えている。お茶を飲むのも良いが、さらに抽出をしていくつかの手順でハーブを足して回復薬を作る。薬屋として、そもそもこれが作れないと話にならない。世界樹の森へ入り、世界樹本体から派生した幹やこぼれ種から生えだした木を見分けて葉っぱをちぎっていく。カゴにポイポイ投げながら大きなため息をついた。
「なーんかな…なぁーーんかな…こんな時に隣にニフがいてくれたらなーー!前は心配して色々手伝ってくれたのにな!今度の爆破の時は冷たかったな!…ぐすん」
愚痴を吐きながらカゴいっぱいに葉を収穫し終えた。
「ニフゥ…嫌われてないよね?だって、実験だったもん仕方ないじゃん?…このままお話できなかったらどーしよー!それは嫌だ!嫌だな。うん」
むむむ…と悩んでいると、きらりと光るものが。気の所為だろうか?しかし、好奇心を止める事を知らないアルマは悩むこと無く光が見えた薄暗い森へと進んでいく。
「蛍石の原石だ!でっかい!!商店街広場の蛍石には全然かなわないけど…両手じゃないと持てないや!」
母岩の上にまるで街のようにカクカクとした小さな蛍石が密集し、中央にはその王様のように突き出ている大きな四角い蛍石。淡い若草色から中心にかけて色を濃くしている。キリエの光源は発光植物や蝋燭、そしてメインがこの蛍石だ。これを磨きあげランプを作っているのだが、原石だけでも光を放っている。
「わぁ、蛍石って粉末にして飲んだらどんな効果があるかな?薬効とか…ああ!違う違う!これはとてもキレイだと…思う!うん!」
そう言うと目の高さまで持ち上げて見つめる。ニフの制服と同じ緑色。キリエでは世界樹を表し礼服や地位の高い人によく使われる大事な色だ。これをあげたら喜ぶかな…そう想像するとニヤリと微笑んで目を輝かせた。
「すぐに帰ろう!待っててね、ニフ!」
バシッ!両手に乗っていた石が何かの攻撃でゴロリと地面に落ちた。ジュルジュル…不気味な音が響く。四肢の長い奇妙な影が近づいてくる…ピシャーチャだ!
「肉…血…」
「あーー!貴様かぁ!!私は今非常に怒ってる!この叩き落とした物がどれだけ大切か!割れてたら絶対に生かしてはおけないからな!!」
そんな叫びを無視してピシャーチャは近寄ってくる。足が蛍石を蹴飛ばす。
「よし、お前は死刑だ…」
アルマから瘴気が漏れる。牙や爪がメキメキと音を立てる。…そもそも、アルマにはしっかりした戦法などない。その戦い方は酷くめちゃくちゃで、採取用の小刀で切りつけたかと思うと爪が鋭く肉を抉りに来る。ガサガサと走り去って距離をとったかと思えば薬剤の瓶を投擲してくる。硫酸だろうか?ピシャーチャは甲高い声を上げる。
「命乞い?醜いなぁ…お前、私を喰おうとしたんだろ?」
許さないからな!!と大声で叫ぶと敵を鷲掴みにして尻尾と両腕で引き裂いた。
「はい、御用でしょうか…ああ!!」
一時間後、キリエの出張所にはボロボロになった白衣の人物が蛍石を持って満面の笑みで立っていた。
「二フゥ!綺麗でしょ!?割らずに採取して持ってこれたんだ!褒めて!!私を褒めて!」
「そ、そんなことより大丈夫ですか?泥汚れが…ああ!こっちは血が出てる!手当しないと!」
「…え?心配してくれるの…?この私を…なんて…なんて優しいんだぁ!!」
喜びのあまりニフを抱きしめようと手を動かした。その拍子に、ガタン!…パリッ…嫌な音がした。さっきまで抱えていた蛍石が手元に在らず、足元に転がっていた。
「ぎゃぁぁあああああ!!!欠けたぁぁぁあああ!」
「あーもー!!御静かにぃぃい!!!」
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光のマナを手に入れた
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