【50】泣くないよ(笠利子守唄)
奄海(あまみ)
【50】泣くないよ(笠利子守唄)
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奄美本島(鹿児島)。久保けんお採譜。音楽之友社『南日本民謠曲集』(久保けんお著/1960年発行)並びに柳原書店『日本わらべ歌全集26』より。六音構成【ラシドレミソ】譜面キー【Am】歌唱キー【Em】No.2は別歌ですが、譜面ではNo.1に繋げて一曲として紹介され、採譜者の久保けんお氏も「口ずさむのにもいいから並べて載せておく」としています(南日本民謠曲集)。後述の『たて笛独奏名曲集』(本山定男編)でも一曲扱い。ここでも繋げて唄いました。歌詞は1980年発行の全集26(同じく久保けんお氏が採譜解説)より。
■歌詞
No.1
ハーランヨ(ねんねんよ)
ハーランヨ
泣くないよ
坊ぐヮやよ(坊やよ)
泣くないよ
泣くないよ
阿母[あんま]やよ(母さんは)
何処[だち]もーち(どこへ行った)
阿母やよ
唐芋堀[とんふ]りが(芋掘りに)
野原[はーる]ち(野原へ)
行[いー]ちゃんど(行ったよ)
唐芋堀りが
行ちゃんど
ヨッコロハイヨ(ねんころしょ)
ヨッコロハイヨ
No.2
泣くなちば(泣くなってば)
泣きゅるよ(泣くなよ)
泣くなちば
泣きゅるよ
ヨーハレ(眠れ?)
愛子[かな]よ(愛し子よ)
※尺の都合で最後2行は未歌唱
■奄海(あまみ)
【05】参照。久保けんお氏によれば「(薩摩には)子守り奉公の習慣もなかったようだ」(全集26p25)とのこと。この唄をうたった「奄海」たちは赤子の母や沖縄の守姉(むりあに=【45】参照)のような娘たちだったのかもしれません。「あんまやよだちもーち(母ちゃんどこ行っちまった)」「はるちいーちゃんど(野原行っちゃたよ)」といった歌詞や旋律には守り子の視線も感じます。
■歌唱コード
No.1
[Em]ハーランヨ
[D]ハーランヨ
[Cmaj7]なくないよ
[Em]ぼう[D]ぐヮや[Em]よ
[Em]なくないよ
[Em]なくない[D]よ
[C]あん[D]まや[G]よ
[D]だちもーち
[Em]あんまや[Bm]よ
[Cmaj7]とん[D]ふり[Em]が
[Em]はーるち
[Em]いーちゃん[D]ど
[Bm]とんふり[Am]が
[Am]いー[Em]ちゃん[D]ど
[Em]ヨッコロ[D]ハイ[G]ヨ
[D]ヨッコロハイヨ
No.2
[G]なく[C]なーちー[D]ばー[G]ー
[G]なーきゅーる[Em]よ
[C]なくなー[Am]ちーばー[Bm]ー
[Bm]な[Em]ーきゅ[C]ーる[D]よ
[Am]ヨー[Bm]ハ[Em]レー
[C]かー[G]なー[D]よ
※No.2は3拍子2拍子4拍子が混在しています。
■ライブラリー完結にあたって
何とかこの唄にたどり着くことが出来ました。出会ったのは二十代、子守唄になんの興味もなかった頃。『たて笛独奏名曲集』(音楽之友社/1966年発行)という薄い楽譜集でした。歌詞はなくタイトルは「泣くないよ坊ややよ」。綺麗なメロディーだなと思いましたが熱心に接した訳でもなく、その後は放ったらかしでした。けれど四十年近くたってみると、この歌はいつもどこか遠くで、誰かが唄っていたような気がします。人並みに様々な音楽にのめり込み、気が付いてみれば疎遠になり──そんな繰り返しを重ねた日々を貫く通奏音のように、この歌は小さな音で、けれど止むことなく鳴りつづけていました。きちんと歌詞を唄ったのは今回が初めてです。叶うならば、この歌を口ずさんだ「奄海」たちと一緒に唄ってみたかったな、と思います。下手っぴ歌唱をキャハハと笑われそうな気もするけど、それはそれで楽しそうだ──などと、愚にもつかない思いを記して、このライブラリーは完結させていただきます。拙い歌唱(謙遜抜き。自分でウンザリしてます)をお聴き下さった皆様、改めてありがとうございました。守り子たちと一緒に、これからもどこかで唄って行きます。(2020/12/19。冬濤)
■
以下は勝手に付けた守り子たちの名前一覧。未とあればこのライブラリー未登場。筆者が知らないだけで、これら地域にも心にのこる歌は必ずあります。北海道の松前(まさき)鹿児島の隼人(はやと)は男児名。少数ながら男児の守り子もいたため。
■北海道
シンタ(ゆりかご)
松前(まさき)未
■青森
暮夏(くれな)未
■秋田
小町(こまち)
■岩手
遠野(とおの)
琥珀(こはく)
■山形
翠柯(すいか)
■宮城
北杜(ほくと)
■新潟
銀河(ぎんが)
■福島
真弓(まゆみ)
■石川
吹雪(ふぶき)
■富山
呉羽(くれは)
■長野
科乃(しなの)
■岐阜
各務(かがみ)
■群馬
風音(かざね)未
■栃木
栃苺(いちご)未
■茨城
筑波(つくば)未
■埼玉
深埼(みさき)未
■東京
紅緒(べにお)
利苑(りおん)伊豆諸島
■神奈川
環(たまき)未
■千葉
都雲(つくも)
■山梨
葡萄(ぶどう)未
■静岡
峰音(みね)未
■愛知
亜由(あゆ)未
■福井
若狭(わかさ)
■京都
古都(こと)
■滋賀
琵琶(かなで)未
■三重
鈴鹿(すずか)
■奈良
明日香(あすか)
■和歌山
芳乃(よしの)未
■大阪
篠姫(ささめ)
■兵庫
淡路(あわじ)
■岡山
水車(みくる)
■広島
祈里(いのり)未
■鳥取
彼方(かなた)
■島根
神凪(かんな)
■山口
維心(いしん)未
■香川
瞳深(ひとみ)未
■徳島
鳴門(なると)
■愛媛
蜜柑(みかん)未
■高知
清流(せいら)未
■福岡
飛梅(ひめ)未
■佐賀
伊万里(いまり)未
■長崎
天草(あまくさ)
■熊本
天草(あまくさ)
仙波(せんば)
■大分
兎夜(とよ)
■宮崎
日南(ひな)
■鹿児島
奄海(あまみ)
隼人(はやと)未
■沖縄
珊瑚(さんご)
■全国・地域不明
安寿(あんじゅ)
Comment
3commnets
- モンチートお疲れ様でした😊 また再開したらお邪魔しますね🎶 ありがとうございました😊😊😊
- 冬濤
- momiとうとう最終回が来たのですね…😭 最終回に相応しいといった印象のキレイなメロディでした👏🏻 毎回投稿をとても楽しみにしていたんです。色んな子守唄が聴けるだけでなく、冬涛さんのキャプションも楽しかったし、守り子の名前の由来などもよく考えられた素敵な名前が多くて。それらから守り子の目線や気持ちを想像したり、行ったことのない県をイメージしてみたり、色んな方言を知ったりと、旅行気分やタイムスリップしたような気分で楽しませて頂いてました。ホントに素敵な企画だったと思います。ありがとうございました! 今後の活動の詳細が決まりましたら教えて下さいね🎶