【M1】女の子守りは【岩手1】
遠野(とおの)
【M1】女の子守りは【岩手1】
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九戸(くのへ)郡野田村野田
伝承:県教育委員会採集テープ
採譜:千葉瑞夫/1964年
収録:全集2下
キー:C
譜面テンポ:♩=98
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女の子守りは辛いもの
犬めに吠えられ子に泣かれ
近所の子供にいじめられ
こんなだ闇のように辛いもの
あの山越えれば里に行く
お父(どっ)ちゃんさよならもう来ない
そなだごど言わねでまだおいで
風呂敷(ふるすぎ)握り飯下駄添えで
お父ちゃんさよならもう来ない
あの山越えれば里に行く
里のみやげに何もらった
ピッピにカラカラ豆太鼓
鳴るか鳴らぬか吹いでみよ
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こんなだ:意味不明
ピッピにカラカラ豆太鼓:江戸子守唄「でんでん太鼓に笙(しょう)の笛」の変形
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岩手の子守唄は23曲。うち3曲が守り子唄。この唄は歌詞四番までありますが尺の都合で唄いたい部分を勝手にチョイス。私にはキーが高く1オクターブ下げて歌っています。歌詞中盤「お父っちゃんさよなら」と言っているのは奉公先に戻る守り子。「そなだごど言わねでまだおいで」は見送る親のセリフ。口説き唄(愚痴や嘆き)の歌詞から「あの山こえれば」の流れが自然で、守り子唄の大きなテーマ=望郷がしみじみと伝わってくる佳曲。蛇足ですが、この唄に出てくる風呂敷包み、下駄(履かずに腰にぶら下げ)握り飯を、冬濤は「もりっこ三点セット」と呼んでいます。可愛いよね(笑)
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もりっこぶる〜す
─歌ってみよう守り子唄─
■ブルース(守り子唄)編
シリーズ再開にあたって
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この「歌ってみよう守り子唄」シリーズは一昨年暮、一度完結させました。投稿サウンド【01】→【50】の内容は複数の楽譜集からランダムに選んだ全国の子守唄47曲。その後ブランクありましたが、この【M1】から新たにブルース編を始めます。具体的には『日本わらべ歌全集』が「守り子唄」と分類した唄を、北から順に、できれば全部、歌ってみようという無謀にして誰得の企画ですが、去年ツイキャスとYoutubeでこれを始めて中部・東海あたりまで来たところで挫折。今回は仕切り直しです。柳原書店『日本わらべ歌全集』(以下「全集」)には全国各地の子守唄929曲が収録され、うち174曲が守り子唄と分類されています(冬濤カウント)。北海道、青森の巻には守り子唄(と分類された子守唄)がなかったため岩手がスタート。例によって下手くそきわまりない素人歌唱ですが大目にみてやって下さい。
■子守唄と守り子唄
守り子唄は子守唄の小分類です。日本の伝承子守り唄は一般に、①寝させ唄(坊やはよい子だ等)②遊ばせ唄(お月さまいくつ等)③守り子唄(五木の子守唄等)に分類されますが、分類は便宜上で、どれも子守り現場で歌われた唄=子守唄です。英語のララバイ(子守歌)やクレイドルソング(ゆりかごの歌)は寝させ唄に当たりますが、守り子唄は奉公守り子など守りっ子たちのワークソングないしはブルース。【01】→【50】では、子守唄全般を守り子たちが歌い継いだ唄=守り子唄と呼んでいますが、【M1】以降では『日本わらべ歌全集』が守り子唄と分類した歌を守り子唄と呼ぶことにします。
■伴奏楽器
伴奏は手作りの二弦楽器(プロフ画像。調弦1G2C。弦は釣糸)。【39】【49】でも自作の三弦楽器を使いましたが同様の手作り玩具です。まともにチューニングできませんが、守り子唄は三味線のような立派な楽器の伴奏で歌われた唄ではありません。素人工作のショボい音色がむしろ合ってるかな、と。この二弦楽器の名前はそのまんま「もりっこ」。守り子たちの呼び名あるいは自称として各地で使われた言葉です。ボディーに使った空き缶を提供してくれたのは職場の同僚、北林恵理子さん。ちょうどよい形と大きさで、和楽器(?)にディズニーのイラストというミスマッチがむしろ楽しく、守り子たちが喜んでいるような気がします。ありがとうございました。
◼️地名表記
柳原書店『日本わらべ歌全集』(全27巻39冊)は1979-1992年発行。キャプション記載の市町村名は各巻発行当時のもの。その後、市町村合併が急増して現在では多くの町が消滅しています。
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