【32】天満(てんま)の市
篠姫(ささめ)
【32】天満(てんま)の市
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大阪府。採譜多数。歌詞旋律多数。ここでは郷土文化協会『篠笛日本名曲集2』(尾原昭夫編)より。五音構成【ドレミソラ】譜面キー【Am】
このライブラリーは、あまり知られていない守り子唄の紹介が目的で、有名な五木の子守唄や江戸子守唄(坊やはよい子だ。江戸の唄かどうかは不明)などは、下手な私がいまさら歌っていません。天満の市も全国的に有名ですが、旋律のヴァリアンテが多く、なかでもこの譜面の旋律がとくに美しく感じたので、あえて歌わせていただきました。私は歌い出しが苦手で、ウォーミングアップ的に譜面にないラララを、歌詞の前に入れています。
■歌詞
ねんねころいち 天満の市で
だいこ(大根)そろえて 舟に積む
舟に積んだら どこまでいきゃる
木津や難波の 橋の下
橋の下には かもめがいるよ
かもめとりたし 網ほしや
大根積んだ舟が大根産地の木津・難波に向かったり(木津・難波村は大阪旧市内への守り子の供給地の一つだったとのこと)橋の下に海鳥のカモメがいたり──と、この歌にも謎はいろいろあるようですが、筆者の印象に残ったのは別の部分。【30】でもふれましたが、守り子唄には、誰かがどこかへ行ってしまった──親とかお守りとか、この歌なら大根積んだ舟とか──というフレーズがよく出てきます。感じるのは二つの感情。一つは「自分に赤子押し付けてどこで何してんだ」という守り子の愚痴。親はどこかで遊んでいる訳ではないし、守り子にもそれは分かっているのですが、それでも出てくるのが愚痴というものでしょう。もう一つは「遠くへ行きたい」「ここにいたくない」という素朴な思い。望郷といってよいと思いますが、帰りたい場所=実在の故郷だったのか、どこにもない「どこか」だったのか、それは筆者には判りません。
■篠姫(ささめ)
谷崎潤一郎の『細雪』(ささめゆき)は大阪の旧家とその姉妹の物語。海外でも評価の高いこの作品タイトルから、命名は篠姫(ささめ)。「細」の替わりの宛字です。
■歌唱コード
(Am)ねんね(F)ころ(Am)いち
(F)てん(G)まの(C)いちで
(Em)だいこそろ(Am)え(C)て
(Dm)ふね(Em)に(G)つむ
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