月のワルツ
ディアドラ&カサブランカ
月のワルツ
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PM9:00 October31
店の中に足を踏み入れた貴方は
呆然と立ち尽くした。
目の前には広々としたエントランスホールと
手摺の意匠が美しい2階へと続く階段。
随分と古びた小さな店に見えたはずだが……。
まるで何か魔法にかかっているようだ。
「そこに居るのはどなた?」
「貴方も招待されたマスターかしら」
上から降ってきた声に顔をあげると、
二階からゆっくりと灰色のドレスの少女と
黒いドレスの女性が階段を下りてきた。
少女はドライフラワーのティアラを、
女性は顔を隠すベールと捻れた小さな角を
それぞれ頭につけている。
「ふふん、素晴らしい衣装でしょう?
わたくしのマスターのディアが作ったのよ」
「カサブランカがゴーストで、
私の衣装が悪魔のつもりなんですが…」
灰色のドレスの少女が誇らしげに
スカートの端を摘み、くるりとターンする。
貴族の淑女のような優雅な所作だった。
ゴーストと悪魔というだけあり、
どちらのドレスも所々の布が破れたり
裂けたようなデザインになっているが、
よくみると素晴らしい刺繍が施されている。
とても美しいドレスだ。
貴方が素直に感想を伝えると黒い女性は
嬉しそうにはにかんだ。
「ありがとうございます。
パーティーではダンスがあるそうですから
ドレスにはこだわりたくて」
「歌乙女は音楽が好きですもの。
きっと今日のダンスのために
皆、思い思いの衣装を着てくるでしょうね。
………そういえば、貴方の歌乙女は?」
「まぁ、わからない?それは困りましたね」
二人は驚いて、顔を見合わせる。
「早くパーティー会場に行って
歌乙女を探したほうがよろしくてよ。
……きっと貴方を探しているわ」
「会場までは私達がご案内しますから」
ふわり、ふわり。くるり、くるり。
灰色と黒色のドレスの裾が踊るように。
右へ左へ。前へ後ろへ。
ステップを踏むように闇を進む。
「こんなに月が蒼い夜ですから、
きっと素敵なパーティーになりますよ」
「さぁ急いで。ダンスが始まってしまうわよ」
向かうのは不思議な夜のパーティー会場。
歌乙女のいない貴方は──
どうせ帰り道もわからないのですから。
#EQCENTRIEQUE #ディアドラ #カサブランカ
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こんなに月が 蒼い夜は
不思議なことが 起きるよ
どこか深い 森の中で
さまよう わたし
タキシード姿の うさぎが来て
ワインはいかが?と テーブルへ
真っ赤なキノコの 傘の下で
踊りが始まる
貴方は何処にいるの?
時間の国の迷子
帰り道が 解らないの
待って 待っているのに
眠れぬ この魂は
貴方を捜し 森の中
「月の宮殿(チャンドラ・マハル)」の王子さまが
跪いて ワルツに誘う
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