trick and treat
エリオット&ルピナス
trick and treat
- 60
- 9
- 1
PM8:00 October31
森の奥へ奥へと貴方が足を進めると、
突然目の前に古びた建物が現れた。
埃に薄く汚れた窓の横には
「ドールショップEQCENTRIEQUE」と
店名らしきものが記された金属の看板が
夜風に吹かれギィギィと鳴き声をあげている。
こんな森の奥にドールショップ?
貴方は不審そうに首を傾げ窓を覗き込む。
店内には何体か人形が並んでいるらしい。
薄暗い中に一際輝く赤銅色の髪のドールが
ふと目に付いた………何故だろうか。
不思議な感覚にじっと見つめていると、
ドールの首がゆっくりと貴方の方へ動く。
そしてその瞳を瞬かせて微笑んだような──
貴方が思わず後ずさった、その時。
「わっ!」
「まぁエリオ!大丈夫?」
背中に走った軽い衝撃に驚いて振り返ると
小柄な少年とそれを支える女性。
少年はリボンタイのシャツとハーフパンツの
正装だが、獣の耳と尾が生えている。
狼男の仮装だろうか?
女性の方は月の下でもきらきらと優しく輝く
白いドレスと妖精の羽を身に付けていた。
慌てて貴方が謝罪をすると二人は微笑んだ。
「気にしないで、貴方もお怪我はなかった?」
「僕もぼうっとしてたから。ごめんなさい」
「そういえば、貴方はこんなところで
1人で何をしていたの?
ハロウィンパーティーに来たのよね?」
そう、だっただろうか。
霧がかかったように思い出せない。
「でも、歌乙女がいないと
パーティーの会場に行けないはずだよ」
「はぐれてしまったのかしら?
そういうことならお姉さんに任せて!」
頼もしげに胸を張り、途端に
生き生きとし始める女性に少年は苦笑する。
さして自分と年も変わらないだろうに
お姉さんだなんて。面白い事を言う人だ。
「さぁついてきて!」
「僕の手を握っててね」
さぁ。おいで。おいで。
誘われるまま、貴方は店の扉に手をかけた──
#EQCENTRIEQUE #エリオット #ルピナス
-------------------------------------------------------------------------
深い深い霧の中 妖艶に響く声
おいでおいで この森のもっと奥深くまで
早く早く 急ぎ足で できるだけ近くに
おいでおいで さあ楽しい
遊びを始めよう
シナモンスティックは魔法のステッキ
一振りするだけでシロップが増える
苦ささえ忘れて甘い夢の中
天蓋に守られて 眠りに落ちる
幻想の催眠に溺れたままでいい
目隠しを外しちゃ面白くないでしょ?
足元ご注意 その手は僕が引くから
その身を今すぐに
委ねなさい さあ
Comment
1commnets
- 懐中時計ハモりが綺麗に決まっている 素晴らしい