初めまして「ハスタとしろ」
秘密結社 路地裏珈琲
初めまして「ハスタとしろ」
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最近仕事で不運続きだから、占いにでも行こうかなとぼやいていたら、ハスタがおもむろにカードの束をテーブルにセットした。
まさか、と、一瞬時間が止まる。飲みかけのコーヒーカップを口に当てたまま、期待で目をまん丸に見開いたしろへ、彼女は“タロットカードなんかするよりも、ポーカーをやったほうがよっぽど調子が分かっていいよ“といたずらっぽく笑って見せた。
パンのジャムを塗った面が、カーペットに落っこちる可能性は限りなく高い。
二度あることは、三度ある。
泣きっ面にはち。
親の仇かってくらいに二人で切りまくったカードを、適当に引き、交換するたびにそんな言葉をあげてゆく。要は、今ついてないって思ったら負け。不幸を認識した瞬間に、不幸は大挙して押し寄せる。ことわざになるくらい昔から、そう決まっている。
手札を見たハスタの口元が嬉しそうだったから、賭けた角砂糖に別れを告げてあっさり降りたしろの手を、あの豆だらけの手が掴んで引き留めた。
「...今なんで降りたの?カード数えて、分が悪かった?」
「ハスちゃんからやばい雰囲気感じたから、むしられる前に」
パサリとテーブル上で明かされた彼女の手札は、5のワンペア。
しろの手から、ため息と一緒に滑り落ちた手札はツーペア。
ずるいよと足をジタバタするしろを、遠くキッチンの向こうからサトウとタナカが笑う声がした。
「ねえ、今見たでしょ、私笑っただけで運が来た」
「......私にも来るかな」
「来るよ、やってみて」
もう一度カードの扇を持って、恐る恐る不適に笑い合った二人。
......しろも、ハスタも、そのまま吹き出して、かけらも揃わない手札を盛大にばらまいた。
明日はきっと、彼女がどこかでボロ勝ちする。
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ハスちゃんから、ちょっと悪くていい女になるコツを教わって、しろちゃんはますます立派な秘密結社ガールに育ってく。
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