「ミウラ...!?」(アヤ)
秘密結社 路地裏珈琲
「ミウラ...!?」(アヤ)
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起きたら起きたでまた、ひょっこりと現れたアヤに引っぱられて、ミウラらしき男は図書館に連れられてきた。サトウさんが酒に強いと称するなら、少なくともスズキさんと同じくらいはのめるはず、という推理で、偽者の疑いがますます高まってしまったんだから仕方がない。
「抜き打ちテストです!これは誰でしょう!」
適当に引っこ抜いた歴史書の中から、これまた適当に開いたページに描いてあった、東洋の国の偉い人とその名前を示す異国の文字を指差して、アヤがドヤ顔でそれを見せつけてきた。彼女の記憶によるならば、サトウが言うにはミウラは歴史に明るい人物であるらしいのだ。当の本人はと言えば、まだ本調子でない頭に氷嚢を乗っけて、アヤと書面を見比べている。
「っはぁ〜、がばいかわいい.....」
「感想じゃなくて名前を答えてください!」
「あ、いや、俺はこのおじさんではなくて、今あなたのことをですね」
噛み合わない会話を、アヤが唐傘で床をひとつきした音がぶった切った。
解答権は3回、グシャグシャとやけを起こして掻き回した金髪が、たんぽぽみたいでちょっと可愛い。
「なかおちのかたまり!!」
「なんか惜しいです」
「とうとみのかたまり!!」
「かたまりから離れてください」
「とうとみのかまたり!?」
「りくさん!やっぱりこの人、ミウラさんじゃないかもしれません!」
「待て待て待てまて、逃げないから!フライパンは置け!?」
いよいよ、本物で在るかどうかが怪しくなってきたミウラらしき男。
後が無いにも関わらず、彼には切羽詰まった様子がない。それどころか、先ほどから面倒くさそうに時計にチラチラ視線を落としては、外を気にしているようだった。さながら誰か人を待たせて居て、待ち合わせに遅れる時のような焦り。地べたで貧乏ゆすりを繰り返す足がピタッと止まったかと思ったら、同時にホール入り口のドアが開いた。
「......やばい」
アヤが、忙しなく視線を行来させるのも無理はない。
だって、そこに立っている男の姿は、どう見たって...
「.......ミウラさんが、もうひとり?」
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ミウラ、お前は一体なんなんだ。
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