「...ミウラ?」(美子)
秘密結社 路地裏珈琲
「...ミウラ?」(美子)
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床に男が転がっている。死んではいない、ちょっと呻いている。
さっきまで大騒ぎして追いかけっこをしていたはずが、また、急展開である。らちが開かないので、お前がミウラであることを証明しろと詰め寄って、美子がその辺に置きっぱなしになっていた焼酎をストレートでグラスに注いで突き出した。受け取るだけ受け取った彼は、あきらかに遠慮したそうな空気で背を丸めたのだが、ここで誘いに応じなければ間違いなくまた追い回されると悟ったのだろう。意を決したように仕方なく、美子に付き合って3回ほど乾杯を繰り返し、4回目が注がれるのを待たずして、そのままふらふらと床に座り込んでしまった。それで最終的に、ちょっとタイムっす、の言葉を残してこの有様にたどり着いた。
酒に強いって聞いていたのに、前評判とは大違いじゃないか。やはりコイツは偽者なのではないかと、怪訝そうに美子が足先で、床に転がった20代前半と思しき、運送業の自称ミウラを突きながら眉をひそめる。演技にも見えないし、そのまま放っておいて具合を悪くしても困る。
「はー、情っけないヤツだねぇ......ほら、お水。ちゃんとお飲みよ!」
抱き起こしたミウラめがけ、お面の上からぐいぐいグラスを押し付ける出来上がった美子を、みんな何とも言い難い笑顔で見守っていた。
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お酒に強いのはミウラではない?
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