特別短編「ミウラ屋6」(りく)
秘密結社 路地裏珈琲
特別短編「ミウラ屋6」(りく)
- 42
- 13
- 0
これは、りくにとって絶対に伝えておいてほしい事だった。
「ミウラね、時々話通じないらしいから気をつけて!」
「待って、それは傾聴能力が著しく低いの?それとも異国の人なの?」
「あっ、ごめん異国いこく」
ミウラと言いながら、彼には西洋の血が流れているのだという。ちゃんと心の準備をしておかないと、出くわして早々何語ともつかない言葉で話しかけられてパニックを起こしたら、実は片言なだけで共通言語だった、なんて迷惑なことも起きかねない。
ちなみに余談だが、留守の期間が長い時にうっかり配達を頼むと、不在票を尋常じゃない勢いで詰め込まれるから、サトウは彼の事を影で“ペリー”と呼んでいるのだと、タナカが言っていたらしい。きっと、いつもののっぺりした微笑みを浮かべて、秘密にもならないようなしょうもない話を教えてくれたに違いない。でもできることなら、もっと安心してミウラ対策ができる話をしてくれなかったものか......
「ごめん、そういうことで...うちこの後郵便局に届け物出しに行かなくちゃいけないから、ちょっとだけ留守番代わって!」
いつもは億劫な郵送業務が、今日はこんなに楽しみで仕方がない。大事に大事に荷物を抱え、りくはお土産にジューススタンドのミックスジュースを約束して、無事屋外への退避を成し遂げたのだった。
ミウラの襲来は、刻一刻と迫っている...
——next——
Comment
No Comments Yet.