特別短編「ミウラ屋5」(浅葱)
秘密結社 路地裏珈琲
特別短編「ミウラ屋5」(浅葱)
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「ミウラ、ヤギ系だって」
「なんて?」
「あのー、ヤギさん郵便?読まずに食べちゃう?」
ミウラがややこしいやつだと言うことだけは、着実に、確実に伝わっている。取り扱いが難しい人間だから、サトウがあれこれ一生懸命事細かに話して出て行ったのだろうけれど、なんだか自信がないので一番自分が大事だと思った話題を念押しして伝える事にした。
“ミウラは、結構荷物を取り違えるので、確実に立ち会った上で検品を行なってから帰すこと”。人が運びたがらないヤバい荷物を一手に引き受けているものだから、一度製菓用の上等な小麦粉を任せたら、何とは言わないけれども上等な白い粉と取り違えられてえらい目にあったとか合わないとか......さすがに、そんな現場での立ち合いはご遠慮願いたいものだ。
通りすがりに留守を預かったものの、今日は運良くこれからエンジンの点検当番。申し訳程度に覚えていた他の事もおおよそ話しきって、浅葱はスッキリした様子で動力部へと駆けていった。残された次の留守番の頭の中で、去り際浅葱が歌っていたヤギさん郵便がやけに反響する。
「あっ......」
ヤギに記憶をもっしもっしと食べられたような気がしたのは、多分錯覚なんかではないだろう。曖昧な伝言リレーに、収束の気配は未だない...。
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