特別短編「ミウラ屋3」(悼)
秘密結社 路地裏珈琲
特別短編「ミウラ屋3」(悼)
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「タナカさんが、ミウラ屋の人ちょっと残念って言ってた.....」
「残念って、ど、どう残念なの!?」
「えっ、いや、なんか......すごいアレなポエムとか書いちゃったり、厄介ごとに浪漫を感じるタイプで、秘密結社って聞いただけで感極まっちゃうタイプって......だから、ちょっと気をつけて」
「あー...大丈夫、悼ちゃん、多分それは厨二病ってヤツだよ」
悼がテルに、なんとかかんとか覚えている限りの情報を語り尽くし、不安そうに目を泳がせた。ヤバい、ちゃんと合っている気がしない。でもこの話だけは印象的だった、忘れようにも気になり過ぎて引っかかってしまった次第だ。どっちかというと、当たって欲しくはない。だって、イチロウさんに弟子入りしたがって断られただなんて、いろんな意味で金輪際現れない人材じゃないか。
テルには申し訳ないけれど、今日は漫画の発売日だ。この街の本屋はさっさと閉まってしまうから、果たして間に合うだろうかと、気が気でない。落ち着きのない様子に気がついてくれたのだろう、さあ早くと送り出してくれた彼女に、悼は全力で手を振って旅立った。
「帰りに、前みたいって言ってた海の映画、DVDで買ってくるから!」
程なくして、静かになった飛空艇内でまた聞こえる“あっ...しまった”。
テルが頭を抱えて俯いた。
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