大道芸人 メアリ
すとぷり
大道芸人 メアリ
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家を出て、ふーっと深呼吸。帰ってからバタバタとしてきた。妖鳥と戦ったり、お洋服にテンションが上がってはしゃぎまくったり…いけないいけない!これから私の大切な歴史が始まるのだ。気を引き締めないと…!きゅっと顔が引き締まる。
こうと決めたら一直線!後先考えずに進んでしまうのが自分の性格である。そのおかげで、今の大道芸人としての自分があるが、それが短所でもある事をメアリはしっかりと自覚している。キリエに来た大道芸の一団に惚れ込み、仲間になりたい一心でついて行ってしまった。それがどれだけ周りを巻き込むことか、あの時のメアリは分かっていなかった…
何度帰るよう促してもついて行き、道すがらで怪我をしても、食料が尽きかけても必死に仲間になりたいと食いしばるメアリの熱意に感銘し、師匠はついにメアリの弟子入りを許可した。一団は公演の旅路を終えて国に戻る。憧れの大道芸の国、ワクワクして門をくぐる。しかし、師匠から貰った服を着、芸の道具をもって国に入ったメアリを待っていたのは弾圧の言葉だった。
この国の文化を他国の人間に教えるな!外人が我らの芸に触れるな!…その言葉は無論、メアリに入門を許可した師匠にも及んだ。自分の憧れひとつで大事な仲間を、大好きな大道芸を、尊敬する師匠を…巻き込んでしまった。いたたまれなくなったメアリは、申し訳なさに稽古に顔を出さなくなった。
師匠と門下一同での共同生活。食事はみんなで集まって食べる。食事を終えた頃、メアリはついに意を決して立ち上がった。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません!私はみんなが大好きです!大道芸も…!だから…国の人から悪く言われるの見たくないから…私…辞めま」
「我等、一門!!心得を唱和!!」
吸っていたキセルをカン!と叩きつけて師匠は弟子達に命令した。
「何時如何なる時も楽しむ!」
弟子達が息を合わせて叫んだ。
「…メアリ、お前は素直でいい子なんだがね…まるで猪のように突っ走ってしまう。猪突猛進とはこの事ね。良い方向ならいいんだが、間違ってても走ってしまう。でも、忘れるな。我ら大道芸人の心得は真理。何時如何なる時も楽しめ。辛い方に走ったって苦しいだけさね」
「…でも、でも…この国の人じゃない私のせいで…!」
「ははは!そんなもん、頭が堅いと笑い飛ばしな!あたしゃね、革命児なんだよ!この芸は世界に通用すると信じてる。そして…」
キセルにまた火を付け、師匠は美味しそうに吸い上げる。
「この国の人間よりも熱くこの芸を愛する…お前にその夢を託してんだ。楽しいだろ?我等でこの国と世界を変えてやろう…」
ふーと白い煙を漂わせて微笑んだ。
師匠と門下の仲間の想いを背中に背負い、メアリは一人前の大道芸人として、ついにキリエの街で活動を始める…バトンの先に炎を点し、とびきりの笑顔で叫ぶ。
「さぁさ!皆様!お立会いヨ!見ないと損ヨ!!メラメラ燃えるバトンを使ったジャグリング!とくとご覧あれ!!凄いと思ったら、御気持ちちょーだいネ♡」
今日が私の革命初日…
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メアリ 人間 女性
大道芸人
斉天大聖のカミツキ
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