サロン長 ヤミィ
東京事変
サロン長 ヤミィ
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忙しい早朝に疲れた顔、振り乱した髪、ズレたメガネにバフバフと吐き出す白い息…ニフを見たやみぃは天を仰いで目を覆った。まさに落胆の姿。あぁ…と感嘆の声が口から漏れた。
「嘆きしかないわ…ニフ…嘆かわしい!!」
大柄のアグルや高身長のドラコン族みりんに引けを取らない、スラリと高い身長にモデルのような体型。キラキラ輝く金髪は、今日はシンプルにひとつに結んでいる。ゆっくり手を外し、ニフを見つめる。真っ白な肌に繊細で華やかな化粧がしっかり施されている。しかし、その顔は華やかでありながらも凛々しい。男装の麗人…いや、絶世の美青年か…。
「ほんっとに…!何時いかなる時にも美しさは忘れちゃダメ!それじゃあそこいらの魔獣と変わりないわ…ねぇ、新作の…そう、持ってきて…」
やみぃは近くにいた店の従業員に声をかけると何かを持ってこさせた。ニフの顎にそっと手を触れる。
「力を抜いて…そう、少し上を向いて…動かないでね。んー、悪くないけど…少しコーラルを足して…うん、いいわ」
ニフの顔を見てやみぃはにこやかに微笑む。
ヤミィ。白い肌、尖った耳と整った顔、輝く金髪…エルフの美しい特徴を全て備えている。美にうるさいエルフらしく、彼が作り出した化粧品を店で扱い、メイクアップも承っている。
「ほら、鏡」
「…わ!なんて素敵な口紅…!」
なかなか化粧などしっかりやらないニフは暫し春めく唇に見とれていた。
「ああ!開店前じゃなきゃ完璧にしてあげたのに!本当に惜しいわ…」
「いや!これだけでもすごく素敵です!自分じゃないみたい!」
ニフの言葉にヤミィは満足そうに微笑む。
「先生、お聞きしたいのですが…」
従業員がヤミィを呼んでいる。ニフは慌てて羊皮紙と羽根ペンを差し出す。
「お忙しい中すみません!少しだけお時間下さい!住民帳を記入して欲しくて…!」
ヤミィは受け取ると、サラサラと書き出す。その姿もまた様になっている。
「ヤミィさん。エルフの亜人…美容サロンの責任者…って、性別が空欄ですが?」
ふふん、とヤミィは笑って答える。
「わたしはね、男とか女なんて枠には取られないの!男のように凛と。女のように華やかに。全ての美しさを追い求める…それがわたしよ!」
「え?えーっと…はい。一応、中性として書類が通っているのですね、分かりました。ヤミィさんの憑神はキュベレー。状態異常と炎の魔法が使えます」
「これでいいかしら?じゃ!わたしもう行くわね。今度はちゃんと綺麗にできる時間作ってあげるから、ちゃんと来るのよ?」
ふふっと笑いながらヤミィは店へと戻った。
…しかし、なんとも言えないザラつきをニフは感じた。美しさと性別の話になった時の彼の声はどこかしら…何かに怯えるような息苦しさがあった。
「あ!いけない!出張所もう開けないと!!」
またニフはバタバタと走り出した。
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ヤミィ 亜人(エルフ) 中性
サロンの責任者
キュベレーのカミツキ
データを保管致しました。ようこそ!キリエの商店街へ…
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