理事会員見習 シノ
CHiCO with HoneyWorks feat. かれん(Little Glee Monster)
理事会員見習 シノ
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「これから皆さんは街の発展と素晴らしい未来の為に汗を流します。難しい仕事ですが、みんなの生活を支える大切な仕事です。どうか胸を張って進んでください」
…密かに憧れている大学の先輩の演説。既に先輩方は街に配属され立派に働いている。実際仕事をしている人の言葉ってやっぱり響きが違うな…自分の夢へ更に気持ちが高ぶるような高揚感を胸いっぱいに感じた。はずだった…。
「シノちゃん!大丈夫!??あ、もう少しゆっくりして下さい!この手続きは私がやっておくから…そしたら少し午後の仕事が減るから…」
世界樹のお茶を机に置き、ニフは書類の山に埋もれ必死にペンを走らせている。きっとあの熱々のお茶はすっかり冷めているんだろうな…シノはお弁当に持参した卵パンを早々に食べきってお湯を沸かし直した。
出張所のキッチンで、はー…とため息をつく。午前は出張所の掃除に始まり、窓口を開いて住民の相談を聞きながら書類の作成。昼間近に作成した書類の点検。短い休憩を挟んで、また相談窓口を再開。人の入りを判断して、少ない様なら理事会からの仕事を行う。今の時期は住民帳の記載をお願いに回ったり、春のお祭りの手配やミーティング…毎日毎日…あれ?今日って何日だ?昨日は何時に寝たっけ…。最近家に帰ってからの記憶があまりない。先輩の輝かしい演説はなんだったのかな?私の記憶違いかなぁ…お茶をいれながらぼーっとした頭で自問自答する。
今日もなかなか終わらない仕事。これずっとニフ先輩一人でやってたの?と怖くて聞けない。どっぷりと日が落ちた頃、やっと仕事の目処が着いた。帰り支度を済ませてフラフラと帰ろうとした時、ニフが声をかけた。
「ああー!お疲れ様!!シノちゃん来てくれたおかげで仕事が捗ってます…本当に有難いです」
疲れた顔がうるうるとしている。本心で言っているのだろうなとシノは思った。
「最後に本当に申し訳ないです!帰りにウルさんの占い屋にこの書類を届けて欲しいのですが…行けそう?」
感謝された事と理事会員の激務への同情心に突き動かされ、シノは書類を受け取った。
「確かに書類をお渡ししました!夜分にすいません。失礼します」
シノは頭を下げると店を出ていこうとした。すると書類を確認したウルが声をかける。
「まぁまぁ、今美味しいお茶を入れたところ。いいタイミングに来たね…これも導きだろう。少し話をしようよ」
ウルはいつもの笑顔で椅子に座るよう促した。
初めは早く帰りたい一心だったシノも、占い師ウルの話術に乗り色々と話してしまった。
「確かに街を発展させて…みんなを支える仕事って言われて、自分が役に立てたらって夢見ましたけど…毎日書類ばっかり!同じ事の繰り返し!…なんであんなに先輩はキラキラしてたんでしょう?もっと違う世界を想像したのに…」
「ふふ…成程ね。それはガッカリだね」
「…もっとこう…人の相談を受けたりお話して、街の皆さんと一緒にお仕事したり、助けたりして…」
シノは不意にハッとして止まった。ウルは見透かしたように穏やかに微笑み続けていた。
「書類の数だけ人の相談を受けて、書類の数だけ人を助けたんだね。窓口でお話して案内をして…嫌になるほど君はみんなの声を聞いたんだ。それって、凄い事だと僕は思うけどね」
自分の帰宅よりも先に沈む夕日を恨めしく思った。叫びたくなるようなルーティーン。それでも仕事に向かっていたのは…
「出張所に来たみんなはありがとうって言ってくれてたはずだよ?君は確かに街を支えてる。今も君の身近な人が君に感謝してるんだから…」
そう言って、ウルは受け取った書類を広げて見せた。そこにはニフの字で、自分には話しにくだろうから、悩みを聞いてやって欲しい旨と、本当によく働いてくれているから、明日はゆっくり休んで欲しいと伝えてくれと書かれていた。
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