描き続けたのは…(STH部過去編)
白梅莉亜
描き続けたのは…(STH部過去編)
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パパは言った。出来の悪い弟だったって。
パパは続けて言った。俺も出来が悪いんだと。
私にはわからない。何がいけないの?あんなに綺麗な絵が描けるのに…。
パパは絵を描く人なの。だから莉亜は、パパに絵の描き方を教えてもらったんだ。
平面に立体を描く難しさや楽しさにハマったのも絵を描いた理由だけど、一番の理由はパパが莉亜に笑顔をむけてくれるから。
パパは見た目が怖くってあんまり喋らない人だけど、優しい大好きな自慢のパパなの。動物園に連れて行ってくれたり、遊園地にも連れて行ってくれた。楽しくてこんな時間がずっと続けばいいって思った。
絵を教えてもらってからは、スケッチブックと一緒に出掛けた。もちろん、遊園地にもね。木炭片手にいろんなものを見た。木や鳥や遊具や人…それを描き写した。パパは上手だって頭を撫でてくれた!嬉しくてもっと描いた。毎日たくさん、何でも描いた。そうしたら、見ることが上手になっていった。
最初は、目が垂れてきたからうさぎさん眠いんだろうなって思ったり、ライオンさんの目が鋭くなったからお腹が空いてるんだろうなってわかるくらいだった。それで凄いらしい。でも最近では、あの子はあの人が好きなんだろうなって目線でわかったり、あの子はあの子のこと嫌いなんだなってわかったりして、疲れるようになった。
パパに相談したら、やっぱりかって言われた。パパにはわかるみたい。パパは言った、勉強もちゃんとするんだぞって。だから、勉強も頑張った。嫌いな算数も好きになった。
成績表にAが増えると褒めてもらえた。ママがケーキを焼いてくれる時もあった。だから、絵も勉強も好き。
だけど、友達は減ったように思う。一年生の時に仲良かった子は、四年生の時には話さなくなってたし、遊びに行く回数も減っていた。今では、杏奈ちゃん達としか遊んでない気がする。杏奈ちゃん達といると自由にさせてくれるのに一人じゃないし楽しい。それに、疲れない。だからずっと友達でいるのかもしれない。
パパは、友達いるのかな?見たことないし、電話してるのを知らない。だから、聞いてみたの。パパは、悲しい目をして、こうなるなよって言った。何がいけないのかわからなかった。友達いないことがいけないの?パパは、お前にはまだ早い話だなって笑った。楽しそうじゃなかった。
まわりには、大好きなパパとママ、スケッチブックの山と、教科書、杏奈ちゃん達しかなかった。気づいたら、他のものが無くなってた。何があったんだろう。思い出せないや。初めからなかったのかもしれない。だから新しいものが欲しいかと聞かれたら、何もいらない。じゅうぶんすぎる。
物は沢山あっても溢れるだけだって、パパの弟さんが教えてくれた。三回しか会ったことないけど、会う度にいろんなことを教えてくれた。パパは、弟が好きだけど、好きじゃないって難しいことを言ってた。
莉亜は、中学生になった今も、そんなに変わらなかった。友達が増えて、部活動っていうのにも参加した。杏奈ちゃんが作ったんだ。絵も描いてるし、勉強も頑張ってる。わからなかったら教えてくれる友達もできたし。楽しいことも増えた気がする。
莉亜は、ダメな子じゃないですか?パパとママは、莉亜を好きでいてくれますか?
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