Zwei.01
ツヴァイ:○○ 博士:○○
Zwei.01
- 29
- 5
- 1
「あなたが大好きです」
︎︎︎︎☑︎ 当台本は須くフィクションであり、実在する団体及び人物に一切関与しません。
︎︎︎︎
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Zwei (ツヴァイ) : ○○
Ein (アイン) 博士 : ○○
Zwei :
誰もが匙 (さじ) を投げる中、その人だけは諦めなかった。
博士 :
「やったぞ…」
Zwei :
皺 (シワ) だらけの白衣を着た人物が、紙の束を宙 (ちゅう) にばらまいている。
博士 :
「遂 (つい) に、私は…!」
Zwei :
そうして忙しなく部屋の中を歩き回っては、
博士 :
「騒がしくてすまないね Zwei (ツヴァイ)。私がお前のお父さんだ。……さぁ、バイタルチェックを続けよう」
Zwei :
「…おとう、さん?」
博士 :
「…!……あ、あぁ。…私が、お父さんだよ」
Zwei :
父は数秒固まったあと、僕の頭を不器用そうに撫でるのだった。
Zwei :
僕が色々な物事を覚えるのと、父の口数が減っていくのは、同じ速さだったと思う。
博士 :
「まだ、倒れるわけには………」
Zwei :
赤い口元を拭 (ぬぐ) いながら、僕の頭を撫でていた。
博士 :
「………大丈夫だ……」
Zwei :
容態は悪化する一方だった。
博士 :
「……もうお前にしか託 (たく) せない。無情 (むじょう) な私を…呪ってくれ」
Zwei :
「僕は、誇 (ほこ) らしいです。Ein (アイン) 博士の手から生まれたクローンであり息子は、僕だけなんですから」
博士 :
「…すまない…」
Zwei :
「…さようなら、お父さん」
博士 :
「…ッ……これより、被検体 Zwei3021 (ツヴァイ サンマルニイチ) への記憶継承実験を…実施、する」
【音声記録はここで途切れている】 Fin.
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〘 発見された "⿴⿻⿸" の手帳から一部抜粋 〙
訳あって名は明かせないが、いずれこれが誰かの目に留まることを信じて筆を執ることにする。
【世界】
太陽暦 20✕✕年。
現在、地球規模の干魃と土壌汚染により作物の生産が滞っている。
動植物は次々に死に絶え、物資の略奪を目的とした紛争が今日日続いている。
帰国したシュヴァイツァー率いる調査団が提出した書類には、地上全人口の約3分の2が減少しているとあった。
…これを公表することは許されないだろう。
人類滅亡まで秒読みとなった事態に漸く危機感を抱いた各国政府機関はしかし、既にその殆どが国として充分に機能しておらず、未だ混乱の収束には至っていない。
その中でも極度の悪環境である国に対し、辛うじて内部統率が取れている国々は、食物の水耕栽培方法や遺伝子組み換えを含む技術を提供したものの、状況改善には時間を要するようだ。
原因は主に技術者の人手不足によるものだが、ヒトの減少スピードを考えれば、これが如何に遅々としているかが目に見えて分かる。
……そしてこれも致し方ない事なのだが、我が国も決して安全とは言えないため、内心、震えが止まらない。
妥協を重ねた各国は曲がりなりにも不可侵条約を結び、後世代への配慮…それまで禁忌とされていた、ヒトゲノムの人為的永久保存を研究・実行する、という道を選んだ。
そしてこれは "Eve計画" と称されることになる。
この計画により人類は救われると豪語されてはいるが……私はどうしても、そう思えない。
干魃と土壌汚染については、数年前から各地で相次いで確認されている "発光する巨大樹木" が原因の一つとされているが、発見者を含め調査した人々の殆どが既にこの世を去った後のため、詳しいことは未だ解明されていない。
【人物】
Ein (アイン) 博士
我が国におけるヒトゲノム解析・保存の先駆けとなる研究者。
紛争に巻き込まれ妻子が死亡。
孤独感を拭い去らんとして日々研究に明け暮れていたが、紛争に巻き込まれ負傷した肉体的ダメージは隠しきれず、無理を重ねた結果として免疫力が低下。大病を患う。
Zweiに対し、亡くした子息の面影を重ねているようだ。
Zwei (ツヴァイ)
正式識別名 : Zwei3021
Ein博士のゲノム情報をもとにしたクローン個体初の成功例。
当初、後続個体の増産を視野に入れていたため、経過観察対象となっていたが、博士の死期が近いことから大幅に計画を変更。
博士体内の全記憶を移し替え上書きする"継承実験"を実施することとする。
#悲哀 #拍手返します #台本 #台詞 #こだぬき
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1commnets
- Sお借りしましたm(*_ _)m