命の灯火
The Epic of Harmosphere 第3章
命の灯火
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第3節「悪しき魔女は物語る」
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王宮に直談判に行くと決めた3人は、首都ニクスへと向かっていた。
「うわぁ……!何で真っ直ぐ飛ばないんだよ……!」
「フレイ、宙返りしてる」
「どうしてそんなに魔法が下手なんだ……」
距離があるので箒で行くことなったのだがフレイは驚くほど飛ぶのが下手くそだった。シリウスの箒に乗せてもらっているへカティアが目を丸くしている。
箒にしがみつくフレイを見て、呆れたようにシリウスがため息をつく。そしてフレイの箒に手を添えると水平になるように調整した。
「箒に通す魔力を均一にするんだ。偏りがあるから浮く力のバランスが悪くなる」
「お、おぉ……本当だ」
「魔法をあまり使ってこなかったのか?」
「……そうだよ。そもそも僕は剣を振ってる方が性に合ってるんだ」
気まずそうに目を逸らすフレイをへカティアはしばらくじっと見ていたが、ふと何かに気が付いた様子で地上へ視線を移した。
「大きな町……見たことないくらい大きいです」
「あれがニクスだ。街中に箒で下りると騒ぎになるかも知れないな……町外れの林の中に下りるか」
「分かった。魔力を均一に、だよな……ゆっくり魔力を弱めて……ってうわあああ!」
「フレイが落ちてった」
「はぁ……」
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町外れに着陸した3人は、王都に入る門に向けて林の中を歩き始めた。しかししばらく歩いているとへカティアが不安げな声でぽつりと呟いた。
「……何だか静かです」
「まぁ、林の中だし人なんかいないだろ?だからシリウスもここに着陸しろって言ったんだし」
「いや、確かにへカティアの言う通りだ。王都が近いのに妙に静かだ……待て、何か来るぞ!」
シリウスはそう鋭く告げるとどこからともなく短剣を取り出した。同じくフレイも魔法で剣を取り出して素早く構える。
「ん~?あれェ~?誰かと思ったら間抜けのシリウスじゃん!何でいんの?ギャハハハハ!」
頭上から下品な嘲笑が聞こえると、すぐに何かが頭上から周辺の雪が舞い上がる勢いで落下してくる。慌ててシリウスとへカティアを抱えたフレイが飛び退く。
「お前……ッ!アダラァッ!!!」
シリウスが吠える。地面に降り立ったのは豊かな桃色の髪と金色の瞳を持つ女だった。きらびやかな宝石を身につけ、高価なドレスを身にまとっているがそんな装飾品がかすむほどの美貌だ。
そんな美しい女が、衝撃でひび割れた地面の上に何食わぬ顔で立っているのは何かの冗談のようだ。けれどひりつくような空気が彼女が強力な魔女であり、地面を割ったのもまた彼女だと伝えてくる。
「珍しい魔力が近付いてくるから誰かと思ったらお前とはね~?生きてたんだァ?」
「あぁ、生きてたとも!お前を殺すまでは死ぬことはできないからな!」
「はぁ相変わらずイイコチャンしてんの?うっざ」
アダラが忌々しそうにため息をついたその時、軽やかな足取りでもう2つ人影が近付いてきた。
「おやおや、本当に魔女がいるとは」
「遅いんだよ!のろま!」
「すまないね。イライザが乗っているから箒も安全に飛ばないといけないから」
「イライザはマリオン様の箒に乗れるなら、どんな風に飛んでも楽しいです!」
「ふふふ、ありがとう」
マリオンはイライザからへカティア達へと視線の先を変えると、じっと観察するように見つめた。
「……1人はまぁ及第点の魔力量か。薬の材料の足しにはなりそうだ」
「薬?」
その言葉にへカティアが問い返す。
「あぁ、我らが偉大な女王陛下を不死にするための秘薬さ!その為には厄介な材料がいくつか必要でね」
「もしかして、だから私の村の人達の心臓を……?」
「ん?私の村?もしかして君が『死の魔女』かい?ちょうど良かった!死を操るという君の魔法の力をぜひ試してみたかったんだよ」
その言葉にへカティアが後ずさる。へカティアは魔女では無い。だからそんなことはできない。けれどこの3人にそんなことを言って無事でいられるのか。
そんな震えるへカティアの前に誰かが立ち塞がった。
「お前らの手助けなんてお断りだ!」
「フレイ」
「へカティア、走れ!ここは僕とシリウスで足止めするからお前が王都に行け」
「で、でも」
「お前なら出来るよ。小さいけど僕よりずっと賢いし機転も利く。それに、こいつらをやっつけたら後から追いつくから」
そう言ってフレイは微笑む。箒もろくに乗れないくらい魔法が下手くそなくせに。相手はとても強そうな魔女なのに。へカティアの目に涙が滲む。
「……フレイのばか」
「え?何か言ったか?」
「ううん、わかった。私……頑張る」
でも、へカティアにはやるべき事が分かる。
分かるのだと──フレイに信頼されている。だからへカティアは頷くと、身を翻して王都の門へと走り始めたのだった。
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💀ヘカティア・ヌーメニア(cv.唄見つきの)
🪆フレイ・テレシアス(cv.うにの子)
🌌シリウス・スクローイ(cv.琉伊)
🌠ポラリス・スクローイ(cv.琉伊)
🐍アダラ・バートリ(cv.RAKKO)
🏛マリオン・ヴィリエ(cv.はいねこ)
🖼イライザ(cv.小花衣 栞)
🏛漆黒の闇傾く砂時計
🖼頼りなく儚い命の灯火(ひ)
🐍失意の先に辿り着いた
🏛🖼🐍たったひとつだけ確かな鼓動
🌠臆病風吹かれゆらゆらり
🌌底無し苦しみ背負ってもなお
🐍胸を裂くこの傷痕こそ
🌠🌌🐍強さに変わる希望の火種
🪆限りある時間(とき)の中で生まれる
🪆🏛🖼一瞬の閃光は
🏛数多(あまた)の犠牲を払いながらも
🖼それぞれの願い映し出す
💀恐れに立ち止まり終わりを待つぐらいなら
全てを賭けていい
💀🪆🌌生きているその意味に触れたい
All:例え此処が最果てでも
輝くほど消え逝く運命(さだめ)でも
🌌絶望さえも
🪆灰になるまで
🌌🪆燃やし尽くせばいい
All:軋み出した命の歯車
振り返らず記憶に刻み付けて
💀揺れながら確かに煌(きら)めいた
All:命の灯火(ひ)を
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☾第3章 プレイリスト☽
https://nana-music.com/playlists/4044295
☾ 素敵な伴奏ありがとうございました☽
ちんあなご様
https://nana-music.com/sounds/064cabe2
☾ 𝕋𝕒𝕘 ☽
#鈴木このみ #草野華余子
#魔女ヘカティア #魔女フレイ #魔女シリウス #ポラリス_Harmosphere #魔女アダラ #魔女マリオン #イライザ_Harmosphere
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