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#コムロウイの花火_nana
とある世界のとある国、そしてとある辺境の街にある禁忌の森。神様が住まうとされているその森で、今日も妖精たちは賑やかに暮らしておりました。
そんなある日、妖精たちの仲間の一人である旅の妖精が、とあることを言い出しました。
「人間たちが祭りを増やさないのは寂しいが、オレたちでも祭りが出来るんじゃないか?」
その一言に、妖精たちは顔を見合わせます。確かに長い長い時間を過ごしている妖精たちにとって、娯楽はあるだけ意味のあるものです。しかし、自らたちだけで祭りをしようだなんて思いつきはしませんでした。旅の妖精は様々な世界を見て回っているので、知識も豊富です。
ですが、彼らは小さくとも妖精。下手に加護を振りまいてしまうと、人間たちに大きな影響を及ぼしてしまう可能性がありました。妖精というものは難儀なものなのです。その心配故か、桜の妖精は眉尻を下げて旅の妖精を伺うように見つめました。
しかし、旅の妖精も理解していたのでしょう。桜の妖精に一つウインクをしてみせると、その両手を真横に広げて高らかに宣言しました。
「ハロウィンをやろう!」
「……ハロウィン?」
「そう、夜の祭りだ。仮装をして、今日の晩だけ。妖精以外のものになるのだって楽しいかもしれないだろ?」
そう、『妖精でなければいい』のです。そうすれば、加護を振りまいてしまうこともない。自分以外の何かになれば、楽しく祭りができることでしょう。ただし、信仰がなくなってしまうのは困るので、一晩だけという制約つきではありましたが。
しかしそれでも、妖精たちは沸き上がりました。自分の加護を気にせず、別の何かになって、楽しい祭りを催す。彼らの中では既にどんなものになろうかと考え始めている者もいました。
決行は今日の夜。さて、妖精たちはどんな姿になるのでしょうか?
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