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眠れない夜に
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眠れない夜に
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#フィナーレを君に
λευκός σωτηρία02/眠れない夜に
天使。男の名をファエラ、女の名をサリアという。
二人は神の手を持っていた。その手にかかれば、どんな病もたちまち治ってしまう。それもまた、二人を天界のものとして象徴するに相応しかった。
神の手を持つ二人の天使。ひとたび噂になれば、病を患ったものは一心に治療を望んだ。そして二人もまた、それに応えるべく街を奔走する。
だがどんな理由があろうと、天使は必ずナツメの元へ訪れることだけはやめなかった。
そして介する時は、いつも同じ会話で幕が開けるのだ。
「このまま逃げたい」
不意にナツメの口から零れた言葉に、ファエラは前を見たまま答えた。
「どこまで?」
ナツメは少し先に出て、真っ直ぐの道を選んだ。今日の行き先は海だ。
三人は夜の街を歩く。点在する家々から漏れていた声がぴたりと止んで、遠くから波音が響いてくる。
「ぼくが全てから逃げたいって言ったら、二人はどうする?」
「キミについていこう」
サリアが隣で答える。きっとファエラだって同じことを思っていた。二人はそういう性格なのだ、だからいつだって天使と錯覚される。
「病人全員、ここに置いていっても?」
求める人が多ければ多いほど、二人の生活は豊かになる。人々との関係性を築くことは生きる上で大切なことで、二人もそれを苦とは感じていない。
ナツメは知っているから、この問いに確信を得ていた。ファエラとサリアは答えることは出来ない。だがそれ以上に期待している。いつか二人から、本当に欲しい言葉が貰えると。
「やっぱなし。今の、忘れて」
浅ましい。卑しい。二人の物言いたげな表情に知らないふりをして、ナツメは海へ駆け出した。
見えない隙間から靴の中へと砂が入り込む。砂浜はどれだけ踏み込んでも思うように足が動かない。すぐそこまで白波が来ている。
「ナツメ!」
天使の声が重なって、同時に駆け出していく。ナツメの足が波にとられる前に、いつだって二人は来てくれるのだ。
そうだ、天使は優しい。今だってナツメの戯れに付き合って、その服の裾を濡らしている。
期待したい。その優しさと自己犠牲に。
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ㅤ ㅤ Voice actor
ナツメ🧸てでぃべあ
ファエラ💠🦐
サリア❇️07
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