M-206の報告
この被検体は暴力的です。カプセルをよく蹴り、挙句私を持ち運ぶための装置を破壊したため、着脱不可のモジュールに私は接続していました。労働こそしていましたが、自主的な他の人間との接触はなく、彼は常に一人でした。しかし、健康な肉体は頼られ、次から次へと作業場を転々としていました。被検体は私に向かって決まって「機械ごとき」と言いました。何十年も前に廃れたと思った考え方が個体番号数8から始まる人間から出てくるとは思いませんでした。しかし、被検体の表情からは怒りや恨みは感じず、むしろ怯えているようでした。眠る日が決まったその晩、消灯後の彼は泣いていました。目覚めてからはいつも通りでしたが、毎夜すすり泣くのでなぜ泣くのか聞きました。被検体は、「何するにも機械ごときに助けられてる自分が情けねえ」と零しました。私は彼とともに眠ることは出来ませんが、その日はモジュールに接続した状態で夜を明かしました。被検体が目醒めた後、悲しまないといいのですが。
個体番号826804、入眠確認。
#さめるまできみと
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