guest1: Negate
Drop&葉月ゆら
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「シェイドさん!早く来てください…!!これは一体…」
いつも落ち着いた態度を崩さないハビエルが驚いた顔で駆け寄ってきた。
「はいはい…今行きます、お待ちを…おお!ようこそお越し下さいました。当ホテルへようこそ!」
そう笑顔でお辞儀をすると、ホテルのロビーにドカンと置かれた大きな荷物を解く。…客だと?先程、鍵の保有者の使い魔が何人もこの大荷物を運んできた。誰かの荷物かと思ったが、箱には差し出し人も何も書かれていない。そして亡霊オーナーを呼んだらこの態度。ますます意味がわからない。
「オーナー、荷物ですか?お手伝いしましょう」
イザベラがハサミを持って駆け寄ってきた。この騒ぎにロゼは遠くから訝しい顔で見ている。
「丁寧にお願いしますよ。なんせお客様なのですから」
ハビエル同様、イザベラが変な顔をする。状況が全く分からないようだ。しかし、箱を開封した途端、見ていた全員は即座に理解した。後から来たヴィレムが野次馬気分で後ろから覗き込んだ。
「皆揃って楽しそうだな!俺も混ぜてくれよ。面白いものでも届いたの…え?」
ピー…ピー…呼吸音のようなアラームだけがロビーに響いた。中には硝子の棺のようなカプセルに丸まって眠っている少女のドールが入っている。カプセルの中にはびっしり青の薔薇が敷き詰められ、その奥にはコードが沢山走っている。
「開け方が分かりませんね…ふむ…ロゼさん、申し訳ないですが、ヨルさんを呼んでくれませんか?」
ロゼは無言で頷くと図書室へと走った。
「…僕の知識で網羅できる程度のシステムで良かった…。でも、セキュリティがあまりに頑なだなぁ…。厄介だ…それにこのカプセル…か、顔が映る…仕方ないですね」
ヨルはカプセルに手を翳すと首筋の刻印が怪しく光り出す。彼の魔法の力…いや、体に埋め込まれた魔法のようなテクノロジーで無理矢理セキュリティにコネクトしているようだ。アラームが止まると同時に、カパッと大きな音と共にカプセルが口を開く。
「…ここは…処理場?」
ドールは目を覚ますと、ボヤけた声を放った。陶器のように白い肌。そして雨の日の雲のような髪色。服装はまるで舞台の衣装のようだ。黒に白いレースが贅沢にあしらわれている。
「いえ、お客様。ここは迷える思念の休息場、ホテルDe:forNでございます。ようこそ、お客様のご来店嬉しゅうございます」
「…処理場ではないのね。なら、お願い…私を起こさないで。眠らせないならどうか…」
少女は立ち上がるとスカートの裾を摘んで優美にお辞儀をする。露になった脚のパーツが開き、その中から出てきた無数の銃口がオーナーを狙う。
「…どうぞ、私を壊して下さいな…」
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さあ、皆さん!
お客様の来店です。心を尽くしたおもてなしをおねがいします。
アンサー時、質問にもお答え下さい。
『幸せは一瞬ね、貴方の最後の幸せは?』
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