来世は他人がいい③
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
来世は他人がいい③
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__𝕀𝕗 𝕀 𝕔𝕒𝕟 𝕘𝕣𝕒𝕟𝕥 𝕪𝕠𝕦𝕣 𝕨𝕚𝕤𝕙 𝕚𝕟 𝕞𝕪 𝕨𝕠𝕣𝕕𝕤.✩₊*˚
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星空が、割れていく。世界が、壊れていく。
夜色を映した星天界の儀式場に、蜘蛛の巣状のひび割れが刻まれていく。凪いだ水面に落ちた一滴の雫が、波紋を広げていくように。星巫女達の零した涙が、星天界を砕いていく。
瓦礫のような星空の破片が、ぱらぱらと夜の彼方へ落ちていく。零れていく硝子から抜け出したように、無数の淡い光が星天界を包み込み、流れ星となって落ちていく。
かつてこの場所で命を散らした星巫女達の魂が、星になることさえ許されなかった生命が、果てしない夜へと流れ落ちていく。
流れ星は、暗闇を漂う塵が放つ最期の輝き。星でさえない小さな塵の残骸が、確かにそこにあったという証。人々は、そんな小さな存在に願いをかけてきた。夜空の星とは違う特別なものとして、祈りを込めてきた。
星神様をその身に下ろして歌う星巫女達は、星にはなれなかった。誰にも掬われることのなかった星巫女達の願いは、叶えられないままに星天界に囚われた。目には見えない星天界の一部として、永遠の眠りについた。
きっと小さな願いだったのだろう。ただ、生きていたいと。明日も同じ夜空を眺めて笑いたいと。大切な人に、生きていて欲しいと。世界に捧げられた少女達は、最期の瞬間に願った。きっとその願いは叶わないまま、夜空に閉じ込められた。
彼女達はきっと、そんな願いを掬い上げたのだ。未来の星巫女を救うだけではない。誰にも知られることなく朽ちていくだけだった星巫女達の想いを、流れ星へと変えた。星巫女達の生きた証を、願いを、夜空に映し出したのだ。
二色の光を灯す心鍵と光を失った心鍵が、ピシリ、と冷たい音を立てて砕けていく。中心に刻まれた亀裂が広がるようにして、無数の無機質な直線が描かれていく。一点の曇りもない澄んだ宝石が、欠片へと変わっていく。
心鍵に閉じ込められていた神様が、星天界に囚われていた星巫女達の魂が、檻から解き放たれていく。星巫女達の命を代償にして。
天上の世界に響いていた歌声は途切れ、静寂だけが夜の支配者となる。
夜の破片へと姿を変えていく星天界の儀式場には、天秤座と水瓶座――二人の星巫女が、眠るように倒れ込んでいた。手に持った心鍵の宝石は割れ、星屑のように夜を彩る床に散らばっている。二人の魂の色は見えないまま、冷たい夜風だけが通り過ぎた。
世界を変えるために歌った二人の少女は、最期の瞬間まで微笑んでいた。
零が、此処にいなければ。あの時、零が心鍵を割っていなければ。藍空達は、死ななかったのかもしれない。藍空達だけではない。咲羽、祈鈴、叶夜、璃星、璃月、紅愛、柊葉、琉歌、千歳、刹那、灯莉。彼女達が命を落とすことは、なかったのかもしれない。全員が無事にとはいかなくても、生き残った星巫女の数は、今よりもずっと多かったに違いない。零の中の神様が、星天界を壊そうとしていなければ。
「もう、いいの」
どこか遠くから、声がした。初めて聞いたような、随分と懐かしいような。どこから聞こえるかも定かでない優しい声が、零の耳朶を打った。もう責めなくていいの、と。
自分の声だったのかもしれない。都合の良い幻聴だったのかもしれない。零を許してくれる人なんて、もうどこにもいないのだから。
きっと最期の瞬間まで、零は自分を責め続けるのだろう。零がいなければ、誰も死なずに済んだ。そう思い続けるのだろう。
だけど──その声を聞いて、気付いた。後悔だけは、してはいけないと。選んだ未来を悔やみ続けるのだけは、もうやめにしようと。
彼女達は、この結末を自分達の意志で掴み取った。星天界と、星巫女達の無数の魂と心中すること。それが、彼女達の選んだ幕引きだった。その結末を悔やむのはきっと、彼女達に対する冒涜だ。
だから、零は後悔しない。世界に定められたものではない、自分達の手で描いた未来を、結末を。きっとこれで良かったのだと、笑って受け入れよう。
夜空に浮かんでいた零の身体が、少しずつ高度を下げていく。二人の少女が眠る星天界へと、真っ直ぐに落ちていく。神様の欠片が、零れていく。
零の中に取り込まれた神様もまた、零の魂から解放されようとしていた。零があの場所に留まっていられたのもきっと、魂にこびりついていた神様の残滓のせいだったのだろう。
星天界の床に足を降ろし、遥か彼方まで続く星の海を眺める。色とりどりの柔らかな光が、星明かりと混ざり合って世界を照らしていた。星空を映し出す世界の最期に、相応しい光景だった。
懐かしいぬくもりを灯した、ライラックの星明かり。眩い月夜の縁の空色を切り取って灯したような色の光。零が探し求め続けていた、彼女の魂。
力の入らなくなっていく手を、落ちていく光に向けて必死に伸ばした。夜の果てへと落ちていく明かりが、微かに指先に触れる。夢にまで見た再会は、一瞬にも満たないほんの僅かな時間だった。
それでも良かった。最期まで零を守ってくれた彼女が、この場所から解放されたなら。
祈鈴が牡羊座の神様に願ったのは、「星巫女皆の願いが叶う」こと。きっと、蛇遣いの星巫女だった零の願いも叶えられたのだ。
夜の向こうへと落ちていく、彼女の魂を宿した優しい光。煌々と夜闇を照らす、眩しいほどの無数の瞬き。
世界に溢れた光に安堵して、零はそっと瞳を閉じた。
瞼の裏に灯る明かりが、一つの世界の終末を告げていた。
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喪失を抱えて生きた少女達は、生きる理由も、命の意味も持っていなかった。
周囲から切り離された、違う光を放つ世界で生きていた。
膨らみすぎた孤独への怯えが、自分の意志を消し去ってしまった。
抱えきれない悲しみの雨を、一人ぼっちで背負おうとした。
希うたった一つの幸せの定義が、あまりにも小さかった。
芽生えたはずの感情に、名前を付けられなかった。
押し付けられた理想を描いて、呼吸さえも困難だった。
分からない言葉のせいで、涙を拭ってあげられなかった。
心を閉ざして瞳を塞いで、隣にあったぬくもりを失った。
生きていること自体が、罪を重ねることだと思った。
信じて掲げた正義は、少女の愛を殺した。
嘘吐きを繰り返した代償は、大切な人の涙だった。
正しく悲しむことさえも許されない世界で、生き続けなければならなかった。
いつまでも、醒めることのない悪夢に囚われ続けていた。
世界の犠牲に選ばれて、神様のその身に宿して。
それでも、少女達はこの世界で鼓動を紡いだ。歌を奏でた。
何度死にたいと願っても、大切な人を喪っても。翼が折れても、声が出なくなっても。
必死に足掻いて藻掻いて生きて、命を繋ぎ続けて。最期に、世界に出会えて良かったと笑った。
──これは、錆び付いた世界に星を灯した、そんな星巫女達の物語。
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✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
🎐🔗🔥⚡️💘🍂🎈いつか君と眺めた夜空を仰いだ
今となっては君の声も思い出せないようだ
☘️☔️⛓⚖⚜️❄️🗝「いっそ出会わなければよかったな 」なんて
思ってしまうのは僕だけでしょうか
☪︎いま 下手くそな僕の言葉で 何かが叶うのなら
どうか どうか 最大級の
罰を 罰を 罰を 愛を どうか僕に
⚖❄️🗝吐き出さないで 毒を飲み込んだ
☪︎どうか来世は 他人のままで
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♓︎Pisces #星巫女_咲羽
🎐咲羽(cv.おとの。)
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♈︎Aries #星巫女_祈鈴
☘️祈鈴(cv.朔)
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♉︎Taurus #星巫女_叶夜
☔️叶夜(cv.碧海)
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♊︎Gemini #星巫女_璃星 #星巫女_璃月
⛓璃星/🔗璃月(cv.唄見つきの)
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♋︎Cancer #星巫女_紅愛
🔥紅愛(cv.未蕾柚乃)
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♌︎Leo #星巫女_柊葉
⚡️柊葉(cv.希咲妃)
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♍︎Virgo #星巫女_琉歌
💘琉歌(cv.ゆうひ)
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♎︎Libra #星巫女_藍空
⚖藍空(cv.くろ)
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♏︎Scorpio #星巫女_千歳
🍂千歳(cv.07)
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♐︎Sagittarius #星巫女_刹那
⚜️刹那(cv.ハナムラ)
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♑︎Capricorn #星巫女_灯莉
🎈灯莉(cv.瑠莉)
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♒︎Aquarius #星巫女_雪涙
❄️雪涙(cv.海咲)
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#星巫女_零
🗝零(cv.たぬ)
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₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴だんご様
✯𝕚𝕝𝕝𝕦𝕤𝕥𝕣𝕒𝕥𝕚𝕠𝕟✯
イラスト:蓬様
動画編集:瑠莉様
ちゃくろ様
おとの。様
黒川かずさ様
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
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