はきだす
レゴール
はきだす
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乗船メンバーは4人になった。それでも俺の都合は変わらない。ミモザがいる限り、俺の野望は果たされない。
(こんなこと続けて、どうなるっていうんだ)
自分たちの活動に関係なく、物騒なニュースが増えたせいで、危険な目に遭うと危ないとガクの行動範囲が狭められてから、廃倉庫での会合の機会は以前より少なくなった。ブレイン2人が欠けてからの活動は、メリハリと計画性の喪失に繋がり、集まっても無為な時間を過ごすことが増えてしまった。
「よしっ!今日もおまじない完了!」
「ガクくん、何のおまじない?」
「んー?太陽のおまじないでしょ、船が沈まないおまじないに、オレの願いが叶うおまじない!」
「へー、そりゃいいな。願いが叶うおまじない、俺にも教えろよ」
図書室にありそうなおまじないの本を真剣に実践するガクの背後からレゴールは手を回し、自分の頭より低い位置にある薄桃色のふわふわしたくせっ毛に顎を埋める。このところ、レゴールはミモザの動きを注視しつつ、彼とガクの距離をある程度離そうと動いていた。どうにも最近彼の様子はおかしい。先生に呼び止められた、クラスの雑用を手伝っていたと言って遅れてくることが毎回だ。そのくせ、同じクラスのやつに聞くと放課後はすぐどこかに行ってしまって、学級日誌の確認をもらえないから適当にやってると笑っていた。
(俺らに内緒で誰かに会ってる。一体誰に?)
疑惑は取れないまま、その日は解散になった。レゴールは分かれ道を引き返し、ガクとミモザの後を追った。どうせ家まで送り届けているのだから、走ればいくらでも追いつく。ガクの家を過ぎて少しすると、彼の背が見えた。そして、レゴールは立ち止まる。遠くからでも分かる。彼はガクの部屋であろう場所をじっと見つめていた。そこに電気が着くと息を吐いて、元きた道を引き返していく。家が逆方向なのかと追跡を続けると、ミモザは廃倉庫へと戻っていくようだった。
(ますます怪しくなってきた……。何しに戻るんだ?)
その先で見た光景はレゴールのいくつもの可能性の中の1つだった。でもそれは会っている人物だけで、彼らの会話内容の断片しか聞こえないものの、自分の想像の及ばない計画の存在に思わずたじろぐ。今後自分はどう動くのか、ガクのために考えなければ。そう思ってその場から去ろうとした時に、彼は何かを踏んだ。その瞬間空き缶のガラガラとした音が鳴る。ここに来るのがこれで最後だという事が、直感的に理解出来た。
「ごめんね、これしか思いつかなくて」
ビデオを回していた彼にミモザは謝る。目の前には、土気色の顔で倒れるレゴールと、吐瀉物の入ったバケツ、石や落ちていたネジなどもそこには入れられている。この映像は後日ガクに、『レゴールは悪いモノにずっと取り憑かれていて、僕やガクを襲おうとしていたけど、ガクの太陽のおまじないのおかげで浄化されたみたい。今までの事を覚えてるかどうか分からないから、そっとしておいて』と言って見せるものだ。クラスメイトという立場上、最近は扱いに困っていたため、これくらいが妥協点だろう。
「何でお前なんだよ、か……。分からないよ僕だって。背負っていない君には分からないんだ」
#太陽の船
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