カナデトモスソラ
₊*̥𝙰𝚜𝚝𝚛𝚊𝚎𝚊☪︎₊*˚
カナデトモスソラ
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__𝕎𝕙𝕖𝕟 𝕀 𝕟𝕠𝕥𝕚𝕔𝕖𝕕, 𝕀 𝕔𝕠𝕦𝕝𝕕𝕟'𝕥 𝕤𝕖𝕖 𝕒𝕟𝕪𝕥𝕙𝕚𝕟𝕘.✩₊*˚
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星の綺麗な夜だった。
非現実的なおとぎ話が似合うような、そんな静かな星空だった。
今日も、星天界に、召喚された。
その事実が藍空に重くのしかかる。
星天界への召喚頻度は、刹那の話を聞く前に比べて、明らかに多くなっていた。
「蛇遣い座の季節が来る」
刹那に告げられたその事実を、藍空は心のどこかで疑っていた。
――否、疑っていたというよりは。信じることを拒んでいた。
現状でさえ、藍空は生きるのに必死なくらい、体調が悪化しているというのに。
症状の酷い夜は、呼吸が遮られているかのような錯覚を覚えるほどだというのに。
これ以上、星巫女の負担が重くなるなんて。認めたくなかった。信じたくなかった。
脳が受け入れることを拒んで、呼吸がせき止められて。
翌朝目を覚ますと、眦には涙が溜まっていた。
それから数日。藍空は、強制的に。刹那の言葉を信じざるを得なくなった。
藍空と、紅愛。
二人きりが存在するだけの星天界に、黒い少女が――蛇遣いの星巫女が、現れた。
ただひたすらに鮮やかなその黒に、意識が塗り替えられていく。
それでも、藍空は歌った。天秤座の星巫女として、役目を投げだすわけにはいかなかった。
きっとこんな使命感でさえも、植え付けられたもの。
藍空の身体を巣食う神様とやらに、押し付けられたもの。
「神様」は人を救う存在のはずなのにな、と滑稽に思った。
星空の下、正反対の色を名に冠する星巫女達は、歌声を重ねる。
隣に立つ紅愛からは、一切の恐怖が感じられなかった。
それからも、召喚は続き。
刹那の話を聞かされた日から一週間で、藍空は五度、星天界に呼び出された。
こんなに高頻度の召喚は、初めてだった。「天秤座の季節」でさえも、こんなに星天界を訪れたことはなかったのに。
五回あった星巫女の務めのうち、三回。蛇遣い座が、星天界の視界に入った回数。
彼女は毎度、星天界に攻撃を加えたわけではない。
ただ星天界を見ているだけの日もあれば、普段と同じように星巫女達を殺そうと、攻撃を加えてくる日もあった。
こちらの言葉が通じていないのか、それとも対話に応じる意思がないのか。
数度試みられた彼女との対話は、今ではほとんど諦められている。
「話せば分かる」なんて、所詮は夢物語だった。
現実は、分かりあうためのスタートラインにすらつくことを許されない。
明らかな召喚回数の変化は、藍空だけに訪れた事態ではないようで。
共に暮らす紅愛も、異常な数の召喚に晒されているらしかった。
星天界を訪れる頻度が増えたところで、全く苦しそうな様子を見せない紅愛に。
一度、訊ねたことがある。辛くないのか、と。
彼女の答えは、端的だった。
「それは、何?」
その言葉が耳朶を打った時の衝撃を、藍空は忘れない。
何も映していないかのような、空っぽの紅い瞳で。
藍空の発した言葉の意味を、「辛い」という言葉の意味を、訊ねた。
彼女は、何も感じていないのだろうか。
痛みも、苦しみも、辛さも、何もかも。
彼女と接した感覚は、思考がお花畑の琉歌とはまた違っていた。
琉歌は、ただ怖いくらいに、負の感情に鈍感なだけで。自分の意志も感情も、ちゃんと持っている。
だけど、紅愛は。藍空が刹那を責めた日に見せた、機械のような目を思い出す。
紅愛は、刹那を盲目的に信仰しているように見える。
そこに、自分の意思や感情といったものは、一切介在していない。
感情を持っていないのか、それとも押さえつけているのか。
または、生まれた感情をラベリングする術を失ったのか。
彼女の判断は、いつだって機械的だった。正義、善悪。そんな基準を全て、明文化された他者に委ねていた。
藍空には、理解出来ない。
ただその在り方は、酷く不安定で危うかった。
◇◇◇
藍空はまたしても、星天界に召喚された。
見慣れてしまった藍空の――天秤座の部屋が目に映る。
ぽたりと、一粒雫が零れ落ちた。
その正体が分からなくて、目元を乱暴に拭う。
藍空は、泣いていた。
理由も分からない涙が、次々と頬を伝う。
いや、違う。理由なんて、分かっていた。
藍空は、星巫女でいたくなかった。
もう嫌だった。全て投げ出したかった。
世界がどうなろうが、藍空は知らない。関係ない。好きにしてくれ。
そんな無責任な言葉だけを投げつけて、全てを捨て去ってしまいたかった。
だけど、そんなの。許されるはずがない。
早く儀式場に行かなければ。藍空ではない藍空が、そう叫ぶ。
じわじわと、精神が侵食されていくようだった。
藍空ではない誰かが、名前も知らない神様が、藍空の精神に取って代わろうとする。
依り代になった藍空の身体だけでなく、精神をも汚染していく。
抗えない義務感に飲み込まれるように、藍空はふらつく足取りで立ち上がり。
自分の部屋を出て、その鍵を閉める。
どこか遠くから、悲鳴のような声が上がる。
誰かに、儀式を任せてしまいたい。そんな思考に浮かされる。
誰かに、儀式を任せる。それは、本来藍空が負うべき負担を他人に肩代わりさせる、ということだ。
間接的に、誰かを殺すことになる。そんなの、許されるわけがない。
溜息の残滓のような、細い息を吐き出し。
濁る視界の中、藍空は儀式場へ向かう道を歩き始めた。
𝕋𝕠 𝕓𝕖 ℂ𝕠𝕟𝕥𝕚𝕟𝕦𝕖𝕕...
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✯𝕃𝕪𝕣𝕚𝕔✯
❄想い出辿るたびに ひどく
押し潰されそうになる けど
☘逃げ込む場所なんてないからさ
繰り返す自問自答
(☘ああ。)
⚖いつもそうやって
(❄まだ)
☘すり減らしてって
(⚖まだ)
❄気づいたら何も見えなくなってた
⚖わからないものが
つもり つもる まえに ほら
☘⚖❄拒んだもの多すぎて
見えないものばっかみたいだ
❄ちょっと触れようとして みてもいいかな
☘⚖❄伝えたいよ きっと無理かも しれないけどどうか
☘ねぇもっと ねぇもっと 見たいよ
☘⚖❄知らない世界で見つけたイメージを
音にするから
✯ℂ𝕒𝕤𝕥✯
♈︎Aries #星巫女_祈鈴
☘️祈鈴(cv.朔)
https://nana-music.com/users/2793950
♎︎Libra #星巫女_藍空
⚖藍空(cv.くろ)
https://nana-music.com/users/1544724
♒︎Aquarius #星巫女_雪涙
❄️雪涙(cv.海咲)
https://nana-music.com/users/579307
₊*̥素敵な伴奏をありがとうございました☪︎₊*˚
➴だんご様
https://nana-music.com/sounds/06242496
✯𝕋𝕒𝕘✯
#Astraea #星巫女
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