私に任せなさい!
カラスヤサボウ
私に任せなさい!
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「失礼します。アルマさんいらっしゃいま…」
「ニィィイフゥゥウ!!」
ぼふぅ!ニフの視界は白衣と白のシャツでいっぱいになった。ドアを開けざまに抱きつかれるとは流石に思いもよらない。ニフはノックの体制のまま熱い抱擁の餌食となった。
「どう!?ドキドキした!?ドキドキはねぇ…いいんだよ!恋のドキドキ!!ストレスはかかると毒だけど、適度で幸せへの変化に関するストレスは程よい負荷となって、体にもいい影響を及ぼすんだ!更に憑神にも作用するのか、魔力の流れもよりスムーズに…」
矢継ぎ早に医学の話をするが、胸元で白い目を向けるニフの圧力に遮られた。あははー、ごめんごめん!と腕を解くとニフはふぅ…と吐息を吐いた。
「ドキドキしましたけど、驚きのドキドキですね。これは純粋なストレスのような気が…」
「それはいけない!ストレスはね、体に悪影響を与えるんだ!免疫力を落としてそれから…」
「…あの!要件よろしいでしょうか!?」
ダメだ、小さな嫌味もアルマの純粋過ぎる心には通じない。ここで足を止められては今日中に街を回るなんて出来ない。時間は無いのだ。
「アルマさん、ハロウィンは参加しますよね?また実験で顔出さないって事は…」
「あーん!違うの!違うんだよニフ!!私はね、ハロウィンが一番大好きなんだよ!?もうキリエに住み着いて半世紀を過ぎてるんだから!…ただ…2年連続で実験が波に乗っただけなんだよぉお!!カレンダーにもマルを付けて、ワクワクしながら過ごしたのに…のに…」
アルマは肩をフルフルさせて涙声になる。
「数日前の実験の爆破でカレンダー焼けたのすっかり忘れてたんだよぉ!あ!!って気付いた時には三日経ってたんだ…この悲しい不幸!!どんな気持ちだったかニフにわかるかい!?」
同じミスを二年も続けるのだから、彼はもはや天才かもしれない。お陰でキリエの古株にもかかわらず、アルマはハロウィンにしばらく顔を出していなかった。
「…でもね、私は考えた!!秋は実験しない…ふっ、これでカレンダーは吹き飛ばない!…なんで、こんな画期的なアイディアを早く思いつかなかったのか!」
目に手を当てて空をあおぐ。そんな劇的な姿をまたもや白い目で見詰めるニフ。
「…でも、実験できないのってやっぱりつまらないよね。薬は作り置きと知り合いから取り寄せてるので何とか商売は出来てるけど…。私の薬じゃない…。体が良くなったってお客さんに言われても…いつもみたいに嬉しくなくてさ」
アルマの顔は寂しげだ。無邪気で大袈裟でハチャメチャなアルマだが、製薬と薬剤師としての熱意は誰にも負けないほど強いのだ。妙な異臭騒ぎや爆発事故も、最終的には新たな薬剤を完成させたくてやっていることなのだから。実際、首都でしか手に入らない薬を作り出しているのも事実で、療養所の医師達はアルマにとても感謝しているのをニフはよく知っている。
「…なら、もしかしたら私はアルマさんにとても良い話を持ってきたかもしれないですよ?」
ニフはニコリと笑うと精霊と話した一部始終をアルマに伝えた。彼程良い反応を返した住民はいなかった。話が進むにつれて顔がみるみる光を取り戻していく。ニヤニヤと笑う顔には爛々と光る牙が覗いた。
「…つまり!それは…!!」
「ハロウィンの出し物に参加してくれますね?」
ぃやっほー!!と大きく腕を振り上げ、うっかりドアの上枠を殴ってしまった。痛!!と拳を撫でながらも顔は笑顔に溢れている。
「いつか実験の楽しさを皆に伝えたかったんだよね!!これでも一度だけ実験室ご招待!ってイベントやっては見たんだけど…私、ご近所さんには評判悪いのかな、お客さん来なかったんだよねー」
あははーと笑うアルマの話に、ニフは妙な納得を感じた。
「やってみたい授業があるんだ!材料も今から急いで集めれば何とかなる…かも!頑張るね!!」
あんなにも嬉しそうな姿を見るとニフもつい嬉しくなって、早速買い出しに走り出したアルマの背中をニコニコと見送った…が、一瞬顔を青くする。
「…危険な実験だけは、断固として許可しませんからね!!お願いします!!…頼むからぁぁあ!!」
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薬局店主 アルマ
三期もよろしくお願い致します!!
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