星々を繋ぎ…
ESオールスターズ
星々を繋ぎ…
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長らく謎に包まれていた星座。古文には登場するが、繋ぐ星の名前に何個か未確認の星があった。暫くはこの星座は空想のものであるという論が支持されていたのだが…
「見つからないはずだ…太陽との軌道の兼ね合いで星がよく見えなかったのか。星自身の光も弱いからな…だいぶ太陽の光から逸れたのと望遠鏡の発達のおかげだ」
はー…と長めのため息をついて、羽を思い切り伸ばした。暗めの灰色に虹色の光沢がランプの光と共に走る、鳩の翼。太陽の光が邪魔で…太陽も星のひとつなのだがなぁ…ステラは目を閉じながら心で呟く。星と言われると誰もが夜を思い浮かべる。昼にだって星は輝いているのだ、ただ太陽の光が強すぎるだけで。その太陽だって…
『ステラちゃん、遊ぼうよ』『やめときなよ、どうせ断られるよ』
『あいつが成績トップのステラって子だろ?』『でも、ほとんどの奴が喋った事ないんだよ』
…目立ちすぎる存在は孤高になりやすいのだろうか。僕だけ異質の者のような扱い。困りはしない…大概一人でできるし、一人の方が捗る。
「僕もみんなと同じただの生徒なんだけどな…」
児童院時代が頭を過り、ポツリと呟く。その手はレポートに書かれた星々を繋いで、空想上だった星座をなぞっていた。…さて、今日はここまで。ステラは屋根の球体に沢山つけられた窓を一つ一つ閉じ終わると、下の居住階へと降りていった。
研究翌日はうっかり昼過ぎまで寝入ることはざらだ。しかし、その日の朝はそれを許さなかった。ドンドンドン!大きなノック音に叩き起され、ステラは白のパジャマのまま、不機嫌そうにドアを開く。
「…あ、まだお休み中でした?皆様の所に訪問した際は研究中の札が出ていたので、改めてお伺いしたのですが…」
「あー…ニフか。…いや、研究が立て続いてね。出来ればもう少し寝かせて欲しかったけど。…なんの用?」
理事会の研究課には長期欠席を申請して受理されている。お陰で星座を見つけられ、今そのレポートを製作中だ。…という事は、ニフの訪問は理事会関係ではないのだろう。だとしたらなんだ?…お茶に来たと言われたらどうしてくれようか。
「実はハロウィンの催しが一部変更になりまして…」
ニフは精霊と話した一部始終を説明しだした。ああ、秋の星空になったとは思ったが、もうハロウィンの時期か…秋も終わりだ。しかし、ここは商店街から外れた草原地帯、いくらひとりが好きだからと言っても、ハロウィンの賑やかさも気付けないとは…ステラは話を聞きながら、商店街エリアを眺めた。
「…という訳で!」「あ」
あれ?聞いてました?と二フが言わずとも表情で問いかけた。ステラはバツが悪そうに口を開いた。
「…つまり、僕の仕事で何か出し物をやれってことかな。拒否権は…」
ありません。とは言えないが、どうか参加を!!という熱視線が代わりに帰ってきた。しばらく睨み合ったが、ついにステラの方が根負けした。
「…僕も理事会員だしね…機材を貸し出そう。…とはいえ、僕の仕事は研究だ。観察して、記録して、レポートにまとめて発表する。それを見せたところで盛り上がらないだろうね。でも、責任は取らないよ」
眠い顔をもたげてニフを見やる。悪意ではなく、実際仕事内容がその通りなのだから盛り上げようがない。それでも参加してくれることが嬉しいのか、ニフはステラの手を取って感謝し、そのまま帰って行った。
部屋に戻ると着替え、かなり遅い朝ごはんの準備をした。ゆったりと食べながら考える。1人が長かった…今更皆と祭を楽しめと言われても、どうも気分が乗らない。出し物をすると言っても、レポート発表以外で人前で話す事が想像できない。ああ、一人で作業するならどれだけ楽だろう。せっかく新たな研究が実を結ぶ、1番ワクワクする時期なのに心が重くなってきた…。
ドンドン…今日は来客が多い…。ニフより落ち着いたノックの主はジーグだった。
「よぉ。注文のレンズ、出来上がったから設置しに来た。悪いが見てくれないか?」
注文していたレンズが完成したのだ。ステラはジーグを望遠室へと案内した。
元々静かな気質の二人。作業中はまるで人が居ないかのように言葉一つ発さなかった。作業をするジーグを見つめながらステラはニフの話を反芻していた。
「君もハロウィンの出し物に参加するのかい?」
「ん?ああ。依代銃の技術を使ってちょっとしたものやろうと思ってな」
「ふーん。君はいいなぁ、華のある技術があって。僕にも話が来たんだけど…望遠鏡を貸し出して話すぐらいしか思いつかない…僕の所には人はあまり来ないだろうな」
ジーグは手を止めてステラを見つめた。まだ学生でもあるステラ、若い鳩の獣人の顔はどこか寂しげだ。何とかしたいが…とはいえ、人が苦手な気持ちはジーグも少しわかる気もする。目を伏せると、ジーグの目に望遠鏡の横の机に置かれていたものが目に入った。
「…これは…星座の図?」
「あ、今作っているレポートだよ。架空の星座だとされていた星がやっと見つかってね」
「へー、面白いな」
「星を繋げて形を考えるなんて昔の人は想像豊かだね」
「…これ、いいよ!なぁ、力を貸してくれないか?」
ジーグは興奮気味に自分の出し物の話をする。次第にステラもそれが可能ならば、かなり興味深い出し物になるのでは?と久しぶりに星以外で興奮を覚えた。それならば僕が監修しよう…私は飛距離を考えて設置して…二人は時間を忘れて話し合い、レンズの設置の訪問が夕方を回る長居になってしまった。
続きはまた別日に話し合おう。二人は手を振って別れた。
望遠室に戻ったステラ。いつもの一人、静かな部屋。でもさっきまでの興奮が胸を熱くさせている。一つ一つバラバラの星が繋がって星座になるように、太陽が沈むから夜の星がより輝くように…一人ぼっちでいるつもりだったけれど、考えてみればレンズを新調してくれる武器屋がいて、今でも煩く連絡をくれる理事会員とその後輩がいて、よその街にはライバルの研究員がいて…バラバラの星でも、太陽のように異質で目立つ星だって…きっとどこかで繋がっていて、誰かを輝かせながら自分も輝いている。
「…の、かもね」
ステラはつぶやくと、友人が置いていったカップでお茶を飲みつつ、ジーグに渡す提案書を書き始めた。
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天文所所長 ステラ
三期もよろしくお願い致します!
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