【声劇台本】なんでもない
声: BGM:hitori チュピカ(haruki) 台本:明烏
【声劇台本】なんでもない
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通りがかりに偶然見かけたあの人は
まるで、ただの大人だった。
あの人があんな風に平気な顔で笑ったり
話したりしていることが
ひどく奇妙なことのように思えてならず、
俺は道路の反対側で、唐突に
数年前の夏に 頭を鷲掴みにされてしまった。
連れ去りたいと思った。
いつもの場所に。
アパートでも
しらけたラブホテルでもいい
あの人が素顔をさらけ出せる場所に
今すぐ連れ去ってやりたいと思った。
あの人はひとりだった。
誰といても ずっと。
互いに別の相手がいたけれど、
あの頃の俺たちはいつも
どうしようもなく ひとりだった。
今、目が_
そんな気がした瞬間
友達が袖を引いて
俺はやっと そこから視線を外す。
なんでもない。
本当に、その通りだった。
あの人にとって あれはただの日常で
惨めでも哀れでもない、
本当になんでもないことなのに。
友達がずっと何かを話していたけれど、
しばらくは
右後頭部の車道の音しか 聞こえなかった。
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