Memory2≫迷子の大人と迷子の少女
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Memory2≫迷子の大人と迷子の少女
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ブロンズステージのある一角。
アパートの一室でリツ=ハギオはお気に入りのバイクの雑誌を読んでいた。しかし、端末が鳴り響き、その液晶に表示された名前を見た瞬間リツは憂鬱そうに顔を歪める。
「……もしもし、母さん?」
「リツ?元気にしてる?なかなか帰ってこないから心配してたのよ」
「あーごめん。仕事忙しくてさ」
「この前もそう言ってたじゃない」
「私ももういい大人なんだから、そんなに心配しなくても良いって……」
「でも昔のこともあるし……」
「大丈夫だって!今度帰るから。明日も仕事早いし切るね。じゃあ」
不満げな母親の声を無視して途中で電話を切るとリツはソファに身を投げ出し、両手で顔を覆って唸る。
「あー……引きずってるのは私の方じゃん……めちゃくちゃだっせぇな私……」
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同時刻。ブロンズステージの路地裏。
「はぁ……はぁ……」
茶色の髪に色違いの瞳を持つ少女が力尽きたように薄暗く細い路上に座り込んでいた。何故かその小柄な体は傷だらけだった。
突然、ゴミ捨て場の辺りから物音がすると少女は怯えたように身をすくませる。
「ひっ……!!………ね、猫か」
ゴミ箱の影から顔をのぞかせる猫に気付くと、少女はそっと猫に近付き怖々と撫で始める。
「あったかくてふわふわ……ふふっ可愛い。ごめんね、ちょっとここで休ませてね」
いつの間にか膝に乗って気持ち良さそうに目を細める猫に微笑みかけ、けれど疲れを滲ませた声で少女は目を閉じる。
「少しだけ。少しだけ休もう……。でも、私どこに行けばいいのかな……」
目から流れた涙を拭うこともせずに少女は眠りの闇へと落ちていった。
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