アイスクリーム【番外編】
Guiano
アイスクリーム【番外編】
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季節外れの暑さだ。まだ初夏だというのにこれではまるで夏本番ではないか。しかも今は日が一番高くなる時間。先程まいた水がすでに蒸発し、ゆらゆらと陽炎をつくる。
『…陽炎は嫌い。』
縁側で少女がぽつりと呟く。そのまま手に持った空色のアイスクリームを一口。
冷たさが口に広がり、そのまま身体中がひんやりとしていくのがわかる。
『…目の前にうつる幻もそのまま溶けて消えてしまえばいいのに。』
そんなことを考えながら相変わらずたちのぼる陽炎をながめる少女。
『みいろ、そんなところで暑くない?どうしたの?』
『…牡丹…。』
そこに金髪の相変わらず美しい女性がやってくる。手には少女と同じ青いアイスを持って。
少し悲しそうな少女を見て一瞬怪訝な顔をしたが、ゆらゆらとゆれる陽炎を見て何かを察したようだ。
『…陽炎は幻を見せる、なんていうものね。…ご主人のこと?』
『幻想なのはわかってるの。…だけど…離れない…。』
二人は陽炎を見つめる。
かつての主人の優しい眼差しが、恋願った人の笑顔が浮かぶ。
…これは偽りだ。自分の都合の良い妄想でしかない。
『わかっている、のに消しきれない。…私もそうよ。』
『失ったもの』と『伝えられないもの』。
二人の気持ちは届かないと二人自身がよくわかっている。なのに溢れ続けて止まらない。
『…こんなに苦しいなら』
『…この愛が届かないのなら』
『『せめて、歌にのせたら一緒にきえてくれる…?』』
ポタリ、と冷たい夏空から雫がふたつ、陽炎と消えた。
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🏵牡丹
💧みいろ
💧嗚呼 アイスクリームばっか食べて
生きていたいよ
🏵️めんどいのポイって捨てて
歌っていたいよ
💧苦しいこと全部歌にできたら
🏵️思いさえ全部歌にできたら
💧君のことばっか歌にできたら
💧🏵️もう何もいらない いらない
君のこともさ
🏵️いらない いらない
💧この愛でさえ
🏵️いらない
💧歌にできるのなら
💧🏵️心さえいらない いらない
感情なんて
💧いらない いらない
🏵️この歌詞でさえ
💧🏵️夏空がとても綺麗だ
💧何もかも
🏵️アイスクリームに混ぜれば
💧🏵️飲めるかな
🏵️嫌なこと
💧アイスクリームに混ぜれば
💧🏵️飲めるかな
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『…アイス、溶けちゃった。』
『あらあら…もうジュースみたいになってしまったわね…。』
しばらく呆けていた二人のアイスはすでに青色のジュースになってしまっていた。
グラスに入っていたため溢れていないのが不幸中の幸いというか…
『氷削って蜜の代わりにしてしまいましょうか。』
『そうだね。冷たい方がいいもんね。』
二人は台所へと向かう。
このモヤモヤな気持ちも、熱い想いも、陽炎みたいに消してしまおう。冷たさで全て、全て飲み込んでしまおう。
…その日食べた夏空の氷菓は、いつもよりもなんだか甘くて、苦かった。
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黄華の屏風のつくも神
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