いいや
大包平(cv.虹月) × 審神者(cv.ひつぎ)
いいや
- 17
- 4
- 0
36.いいや
主!ここにいたか!
せっかくだ。怪談を用意したから聞いてもらおう!この大包平が用意したのは未練の話。霊には未練のひとつやふたつはあるものだ。
幼い子供が、両親と共に本家で行われる葬儀に集まっていた。事件に巻き込まれて亡くなり、死後1週間経過した後に発見された本家の息子はまだ両親よりも若かったらしい。
「まだ若いのに」
と言った声があちこちで起こるのを余所に、子供は初めて訪れる本家に興味津々で、あちこちをキョロキョロとしていた。
突然、「誰か来たよ」と子供は玄関に走って向かった。この家の玄関は開け閉めをするとがらがらと大きな音が鳴るため、音が聞こえなかった事を不思議に思いながら、親も子供追って玄関に出迎えに行った。しかし、玄関に行ってもいるのはキョロキョロしている子供が1人だけ。
なんだ子供の聞き間違いかと思った両親だったが、子供を連れて部屋に戻る途中、子供は不機嫌そうな顔で「ねぇ掃除機の音うるさいよ」と耳を塞ぐ。
今来ている親戚は全員居間に居るはずで、そもそもこんな時に掃除機なんてかけているわけがない。気のせいだろうと子供に言い聞かせるが、子供はぶんぶんと首を横に振り、「ほんとだよ!二階から掃除機の音がするよ!」と繰り返すばかり。
両親が困惑していると、本家の主人が大声で怒鳴りつけてきた。
「おい!!!勝手に人の家の二階に勝手に上がって掃除機をかけるのをやめろ!!」
む、大声を出しすぎたか。せっかくの怪談も台無しになってしまうから声も抑えよう!
両親が二階にも行っていなければ掃除機もかけていないことを説明すると、主人は素直に謝った。
「息子が死んだ日から家中で音がするんだ。玄関の音、掃除機の音、料理をする音、食べる音……。きっと、息子がまだここで生活しているんだよ。早く見つけてやれなかったから、親を恨んで……」
その後も子供は「机叩いてる!」「お庭でお花植えてる!」などの音を聞いて報告したが、葬式を終えて七日を過ぎると、その物音はパタリとなくなったそうだ。
死者に未練があるとこういう現象が起きるらしい。己が死んだという事実を受け入れられず、霊体となっても今まで通りに生活するようだ。……主も未練は残さないようにしろ。
#おーるはろーずいぶ
Comment
No Comments Yet.