初めまして「ハスタと星干し」
秘密結社 路地裏珈琲
初めまして「ハスタと星干し」
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「星こ女史、いいかい。接近のチャンスは頑張っても2回、それを逃したら即座に退散する。くれぐれも振り落とされないように」
「わかった!2回あれば万々歳!」
馬力の強いスズキさんのバイクに、ツヤの消えたサイドカーが取付けられて、星干しが乗り込んだ。天かける跳ね馬の名、バリオスのロゴが光るそれに跨った、本日の騎手、ハスタがいよいよアクセルを回す。
空を切って草原を駆ける車体は、まさに風。体を固定したベルトに勇気を出して身を委ね、まるで流鏑馬の弓をつがえるように、星干しはカメラを構えた。
気圧は980ヘクトパスカル、遥か向こうで放電する雷雲目掛けて、不気味な旋風が走っている。条件は十分、旋風に最接近する瞬間、集中砲火でシャッターを浴びせ、どうしても撮らねばならない者があった。
「それにしても驚いた、“不思議の学会”は本当に存在したんだね...!私が見聞きした、世界中の怪異には、やっぱり科学で割り切れない本物もあったってことだ!」
「私も驚いています、でも本当なの!世界って、楽しいことに溢れてる!」
くるよ!と合図されて、自信を持って覗き込んだファインダーが、凄まじい強風で揺らぎ、カメラ自体が吹き飛ばされそうになる。慌てて体勢を立て直し、一度距離を取った先で、風の正体がはっきりと見えた。馬だ。透き通った蒼に、草の羽を撒き散らして走る、一角獣のような何かが、粉塵の中で駆けている。
「......絶対、逃さない!」
無意識に出た、星干しの闘争本能と好奇心からくる唸り声に、ハスタはヘルメットの下で一体どんな顔をしていたのだろう。思い切って上げられた回転数と、エンジンの咆哮。
望遠鏡越し、二人と一頭が繰り広げる死闘の行方は、砂塵に隠され結局知れないままであったが、飛空挺の上で口笛を吹いたサトウの顔は、えらく上機嫌だった。
「さてさて、お土産話が楽しみだなぁ」
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二人は勇敢なチャレンジャー。
星こちゃんの不思議調査仲間に、強い助っ人誕生。
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