初めまして「ウタウとふーら」
秘密結社 路地裏珈琲
初めまして「ウタウとふーら」
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彼女はとてもフランクで気まま、愛し愛され上手。
それが私の第一印象だった。気ままと言っても、決して、いい加減だなんて事はない。意固地にならず、どんな突然の幸せが舞い降りたって、上手にキャッチして見せる。
初めて会った日、ウタちゃんが私の抹茶ミルクをいたくお気に召し、カウンターで事細かに抹茶スイーツの基本について質疑応答を繰り返していたときのこと。彼女は、お店に入って来たシュークリームの男の子に肩を叩かれ、笑顔で席を詰めた。
友人かと思って席を外した私だったのだが、後から聞けば彼は見ず知らずの初対面だったそう。そして、しばらく経ってオーダーをとりに戻ったら、ウタちゃんは、小さなメモを私にくれた。
甘いラズベリーのインクが香る電話番号、隣で照れ臭そうに笑う男の子。それを見れば、気が回らない私でも、ああそういうことねと納得だ。
「任せてください、デリバリーは夜間でも、どこへでも!無料でお届けしますから!」
これも後から聞いた話なのだが、彼はありがたくも困ったことに、私にデートの誘いをと、連絡先を託したそうだった...。私は、あの時自分が目ざとく彼の本心に気がつかなかったことを心底幸運であったように思う。だって、もしそうなら確実に驚いて、心なく第一声からお断りを告げかねなかった。
ところで、一体誰から後日談を聞いたのか。この笑い話の、渦中の本人、シュークリーム男子のパトリックである。結局私たちは、そう言った男女の仲になるきっかけすら恵まれなかった。がしかし、ウタちゃんがその場で機転を効かせてお茶会を企画してくれたおかげで、彼は恥をかかずに済んだし、異性間特有の妙な距離感をすて、友達として時々文を交わす関係になれた。
「ウタちゃんは、勇気がありますよね...」
「勇気!?私、なんかそんな、びっくりさせるようなことやらかしたっけ!?」
「い、いえ!ほら、なんでもハナから警戒しすぎず、可能性を広げるというか...」
明日纏う、クレープのエプロンを焼きながら、ウタちゃんは自信満々に笑って見せた。
「ふーらちゃんも、味見好きでしょ!?」
「味見?大好き!」
「それと一緒、なんでもとりあえず味見して、それから決めればいいよ」
「そっかぁ、味見かあ」
彼女はとっても、フランクで気まま、愛し愛され上手。
私も漏れなく、そんな彼女が好き。
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ウタちゃんは、幸せを運んできてくれる素敵なお友達。
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