第三話「アテナ『親衛隊』」
プリンセス・アテナ
第三話「アテナ『親衛隊』」
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第三話「アテナ『親衛隊』」
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グランツ王国の王室騎士団長ドルガン・ユスティーシーは執務室のソファに座り、眉間にシワを寄せると大きなため息をついた。
デスクの上には、うら若き少女たちの顔写真と書類が所狭しと並んでいる。
これらはプリンセス・アテナが自らの『親衛隊』と称してグランツ王国全土から募集し、最終選考に残った少女たちの身の上を調査した、いわゆる身辺調査票である。
一週間ほど前だっただろうか、ドルガンの娘でありアテナの側近であるセレネが、珍しく執務室を訪ねてきた。
「お前が騎士団の控室ではなくこちらに出向いてくるのは珍しいな。何かあったのかね?」
「恐れながら騎士団長、貴殿の指揮する騎士団隠密部隊のお力をお借りしたく」
「……どういった事情だ?」
セレネが言うにはこうだ。
━━━プリンセス・アテナが、またいつもの“素敵な思い付き”で突然自らの親衛隊を募ると言い出したこと。
━━━その親衛隊は自分で募集し、自分で選ぶのだと言ったこと。
━━━アテナが言い出したらこちらの話は聞かないことは分かっているので、せめてその親衛隊候補の者たちの身辺調査をしておきたいこと。
「……うむ、我々としても素性の知れない者を場内に招き入れることは出来ん。いいだろう、任せなさい」
「感謝致します、団長」
ドルガンはセレネから受け取った履歴書にも満たない応募用紙に目を通しながら、その申し出を引き受けた。
「ところでセレネ、これは騎士団長である私からの……いわゆる査問のようなものではなく……単純に、お前の父親である私からの素朴な疑問として聞いて欲しいんだが」
「はあ、なんでございましょうか、父上……?」
「親衛隊にしては、その……随分と皆見目が麗しいようだが、そこには何か意図が?」
ぎくり、と目を逸らしたセレネの様子を、ドルガンは見逃さなかった。
そう、この娘は昔から嘘がつけない子なのだ、何しろとても正直者なので。
何も聞かなかったことにすると約束し、翌日から隠密部隊を全国に走らせたのだった。
そして今日ここに、アテナが見初めた5人の親衛隊最終候補者の身辺調査票が揃った。
どの娘にも後ろ暗いところがなかったのは運が良かったのか、それともプリンセスの人を見る目によるところなのか。
いずれにせよ、無事に間に合ってよかった。
夜が明けたら最後の試験、面接の始まりだ。
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びすけっと様
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【テキスト】
あきなと。
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