とうとう商人の家に養子に出された。まだ正式な息子ではないらしいけれど、俺を滅多に外に出さないあの人がわざわざ外に連れ出して俺が知りもしない場所に連れてきてそんな会話をしているのだから間違ってはいないはずだ。……俺の父親を辞めたくなるくらい俺が憎いのだろう。
話を聞かせまいと商人の家の方の大人が俺を部屋から遊んでおいでと追い出した。あの人はそんなこと気にしないのに、そんな大人も居るのかと思った。同時に俺とあの人の関係が本当に周りと違う事に裏付けをされた様でいつの間にか服の袖を皺になるくらい握っていた。怒られるような気がしたけど多分あの人は気にしない
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中に戻る訳にもいかなくてとりあえず廊下を歩いてみる。流石に商家だけあって物珍しい装飾品はうちより多くあった。これを眺めるのは楽しいだろうな、と眺めていたら視界の端に水色が見えた、この家の子供だろうか?後々兄弟になるかもしれない相手だけど、どうにも相手にする気になれなくて敢えて装飾品に目を向けて知らないフリをした。途端に苦しそうな咳が聞こえてきて咄嗟に目を向けてしまう、この季節にはとんだ薄着で馬鹿じゃないのなんて思いながら仕方なく足を向けた。別に子供が可哀想だとかじゃなくて怒られたくなかっただけだから。
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なんだか懐かれてる気がする、そう思ったのは何度目かの商人の家へ来た時の事だ。あれから何度もこの家を訪れては毎回咳をして苦しそうなのを見て放っておけず話し掛ける。そりゃ繰り返してればこんなことになるかなんて小さく溜息を付いて今回も目の前の相手の小さな手を握った。本当に仕方なくてちょっと構う素振りを見せれば咳が途端に小さくなる事なんて見て見ぬふりをした。
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ベッドの上ばっかりがつまらないなんて我儘言うなよ、少なくとも一時間以上は外に出れるだろ。そんな事より次は何して遊ぶの?なんでもいいよ、お願いごとでも、俺が叶えられるのなら……え?ずっと傍に居て?……居るよ、お前のお兄ちゃんなんだから。ほら約束
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ごめん、守れそうにない。手が汚くってさ、お前の所になんて言ったらいつ体調崩すか分かんないだろ。だから、お願いだから約束を破る俺の事なんて忘れて元気にしててよ
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