夢の大地
リリー&サフラン
夢の大地
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「これは野宿して大正解だったね」
「本当だねぇ!」
人類のルーツとも呼ばれる雄大な大地。
その高台の岩場にテントを立て、
満点の星が広がる天蓋を二人は見上げていた。
夜の闇に沈んだ草原にはひっそりと
多くの命が潜んでいる気配がする。
リリーはそっと焚火に薪を追加した。
「私のいた街では人口の光が邪魔して
こんなに綺麗に星は見えなかったよ」
天の川まで見えるほど美しい夜空。
星と月に照らされているだけはずなのに
不思議と明るい夜だった。
「あっ!リリー!流れ星だよ!」
夜空を一筋の星が流れた。
すると、二つ三つと次々と流星が
夜空を流れ始め、空を埋め尽くしていく。
その数に二人は目を丸くした。
「すごい…今日、流星群があったっけ?
それにしてもこの数は……」
「きっと『輝く星の夜』だよ!
前にオアシスに来た行商人のおじいさんに
聞いたことがあるんだ!」
『輝く星の夜』
どんな願い事も叶えてくれる魔法の夜。
美しい心を持った者だけに降り注ぐ願いの星。
しかしそれがどんな夜か誰も知らない。
その話を聞いてリリーは目を丸くした。
「願い事を?何でも?本当に?」
「こうしちゃいられないよ!
リリー!願い事をしなくちゃ!
どうしようかねぇ…願い事…願い事…」
サフランは空を見上げながら首を捻る。
「これからもずっとリリーと
旅ができたらいいなっていうのが
一番の願い事だけど……」
「私も…これから先サフランと
ずっと一緒に旅して歩いていきたい
っていうのは一番にあるよ」
そういって二人は顔を見合わせて笑った。
二人が同じ願い事を持っているなら
星に願うまでもない。
きっとこれからも一緒にいられるだろう。
二人は手を繋いで流れる星たちを見上げた。
「そうだねぇ、それなら……
これからずっとずっとリリーと旅をして…
それで、今はリリーに色んな事
教えて貰っちゃってるけど、
いつかはリリーに頼って貰えるような
歌乙女になりたいよ!」
「サフランはそのままが一番だと思うけど…
そうだな、私はサフランともっと
世界中の素敵なものを見たい、かな。
いつでも思い出して笑えるような
楽しい思い出をたくさん作りたいから!」
その瞬間。
夜空を流れる星の光が花火のように弾けて、
ぱっと黄金色に覆い尽くした。
「わぁ………!!」
「これが『 輝く星の夜』……!!」
そうして、視界が光に染まり───
どすん。
二人は寝袋に入ったまま
テントを立てた岩場の上に転がっていた。
うっすらと朝日に明らんだ地平線は
大地を赤く染めている。
焚火はすっかり燃え尽きて灰になっていた。
「…………夢かね?」
「もしかしてサフランも同じ夢を見てた?」
「『輝く星の夜』の夢を見たよ!」
「私もだよ。うーん、どういう事だろう…?」
夢なのか、現実なのか。
リリーは寝袋からのそりと起き上がり、
同じように首を傾げるサフランを見る。
「あれ、サフランの髪飾り…」
サフランが常にその濃紺の髪に付けている
金細工が美しい小さな髪飾り。
眠りから目を覚ましたばかりのサフランに
リリーが贈った髪飾りだ。
その髪飾りに見知らぬ琥珀色の石がひとつ。
「……こんな石ついてなかったよねぇ?」
「……これってやっぱり?」
「夢じゃなかったんだよ、リリー!」
抱きつくサフランを受け止めながら、
リリーは目の前の髪の上できらきらと輝く
不思議な星の欠片に目を瞬かせる。
星は願いと共に二人の元に降り注ぎ、
そうして新たに昇った朝日は
二人の未来を照らすように輝いた。
小さな星はその光を浴びてきらりと光った──
#EQCENTRIEQUE #リリー #サフラン
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こんなに静かな
薄紅の夜明けに
まだ誰も知らない
憧れの歌が
高らかに始まる
僕らが行ける
限りある
果てまで(果てまで)
遠ざかる未来を
懐かしく照らしてる
去り行く君の為
誰かが繋ぐ
メロディー(時の)
流れるその先へ僕たちを
連れて行く
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