友愛の輪
KinKi Kids
友愛の輪
- 16
- 1
- 0
いつも楽しそうに踊る栗色の尾は戸惑いでピタリと動きを停めている。手にはニフに握らされた謎のドリンク…。どこか淡い緑色…お茶…なのだろうか?くぅーん…耳をペタリと下ろしながら、困り顔でニフを見る。ニコニコと屈託のないいつもの笑顔。しかしいつもの笑顔に、これまたいつもの目のクマ。キリエは理事会員が1人しか在中していない、比較的小さな街。しかし、大都市同様、街の祭りや事件には出向かねばならない。花祭は彼女にとっても激務だったのだろうな…なんでも屋として様々な人を助けてきたちぇり、相手の気持ちを感じ取ってしまうのは職業病なのだろう。
「皆に元気になってもらいたいって気持ち…すっごく分かるよ!今のニフさん見てると、私も思うもん!ニフさんに元気になってもらいたいな」
渡されたドリンクをニフに捧げる。その優しさに目が潤むニフ。とはいえ…あれ?なんかおかしいぞ?渡したドリンクがブーメランで自分の元へと帰ってきているではないか。
「あ、あれぇ?ありがとうございます。でもこれは大変な事があって、お疲れの皆さんに飲んでもらいたくて作ったんです。自分が飲んじゃったら…」
そう言いながらドリンクをちぇりの元に戻そうとすると、キュッと眉をしめて目を輝かせているちぇりが、心底ニフの事を想っていると痛い程伝わる目線を向けていたのだ。どこまでも嘘のない善意。私の事よりも、ニフさんがどうか元気になって…!その気迫に完全に押されたニフは、結局自分がみんなの為に作ったドリンクを自分のために飲む事となった。…クピッ…!!!!!1口含んだだけで、顔は真っ青になり、目を白黒させる。渋い…激烈に渋い。舌が麻痺しそうだ。ちぇりに飲ませなくてよかった!心底ニフは思った。
「わぁあ!ニフさん!!大丈夫!!?」
「苦陽高のお茶っ葉れふ…そーいえは、アクルひゃんがいっへましひゃ…」
薬草でも一二を争う効能高い苦陽高。文字通り、苦味を超えれば光が宿るように元気になれる薬草なのだが、その苦みたるや…。あまりの酷さに、薬効が発見されるまで、毒草扱いを受けているほど渋く、耳掻き1杯でも軽く舌が痺れてしまう。ニフは栄養ドリンクとかこつけて、その分量を欲張ったのだ。
「…そっかぁ…そんなに凄い薬なんだね…分かった!ちょっと知り合いに相談してくるね!」
「え!?お知り合いですか?料理人か誰か?」
「ノームさん!いってきまーす!!」
…え?今軽く四元素の精霊の名前出さなかった?まだ痺れの残る舌の痛みを忘れ、目が点になるニフがちぇりの背中を見つめていた。
「…ここら辺ならいいかな?」
世界樹の森へ入ると、大きな声で遠吠えを上げる。程なくして地面が盛り上がり、キラキラと鉱石を輝かせたノームが出てきた。
「恩人よ、呼んだか?」
ちぇりは皆を支えている友人を元気付けたい事、渋いお茶を飲みやすくしたい旨を伝えた。
「ならば南へ向かえ。花畑に出るだろう。そこには牙狼蜂の巣がある…よく妖精共が食べているから味が良いのだろう。気性が荒い蜂だから、こやつをお供させよう…」
ノームがちぇりの胸元に手をかざすと、ブローチから小人が顔を出した。
「その鉱石の妖精だ。力を貸そう…」
感謝を述べて、南へと向かう。ノームの言う通り、木々が開けていき花が目立ちだす。ガサッ…木の枝を払い除けると、そこには一面の花畑。日頃の梅雨のおかげで青々と葉を茂らせていた。その横には小さな洞窟…忙しなく蜂が出入りしている。恐らくあれが巣なのだろう。意を決して巣へ潜り込む。ワーン!!耳を劈く羽音の群れ。侵入者を排除しようと激しく襲い掛かるが、物理魔法で壁を作りながら防御して進む。目の届かない暗がりや背後は小人が守ってくれたため、最小限の怪我で済んだ。
「おかえりなさい!遅かったですね…って!土汚れ!?どこへ行ってたので?」
出張所で出迎えたニフが驚いて声を上げた。
「えへへー!それより、お土産だよ!さっきのお茶をもう一回出して!」
え、あの不味いお茶を?と思ったが、嬉しそうなちぇりに押され、最後の1杯を差し出す。
「これ!ノームさんが教えてくれた蜂蜜だよ!飴みたいに味が濃くてトロっとしてるから、きっとそのお茶も美味しく飲めるはず」
水飴のように濃度が濃く、透明に近い銀色を放つ不思議な蜂蜜…お茶によく溶かして、ニフに差し出した。…口を抑えながら戸惑うニフだったが、やがてゆっくりとお茶を口に運んだ。
「!!!花の香りが口いっぱいに広がります!舌に甘みが絡まって、お茶の渋さが全く分からない!」
2人はハイタッチして喜び、感動と美味しさでニフはお茶を飲みきった。きっと元気になれるはずだ!
「…あーーーー!!!私が全部飲んじゃった!!」
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
賽子クエスト 失敗
リザルト
クリティカル 1
確率 1/2
オーバーキルワード 無し
Comment
No Comments Yet.