猫と虎と猫耳と
小潘潘&小峰峰
猫と虎と猫耳と
- 34
- 2
- 0
どんよりした雨空、オシャレなカフェ。2人の前には林檎菊のハーブティーと青空に負けない真っ青なサイダー。真っ赤なチャイナドレスをパタパタ足で遊ぶお団子頭の前には真っ黒なスーツに猫耳のピンと立つおかっぱ頭。
「おふたりが並ぶなんて珍しいですね」
「それナー!メアリもお呼ばれ嬉しいネ!」
店員の言葉に元気に答えるメアリとシィッ!と制止するサロンの副長。ヤミィはメアリから舞を習うなど交流があるが、この2人は店で顔を合わせる程度。最初、ショーの終わりに声を掛けられた時は、メアリも驚いた程だ。
「でモ、ふくちょサン仲良くなりたい人って誰ネ?お店にはいつも人がいっぱいヨ。ふくちょサンかっこいいーって皆言ってて人気だヨー?」
メアリの言う通りである。仕事柄、交流は広い。まして隣にいるのはあのサロン長である。街の住民は全員副長を知っていると言っても過言ではない。何より、いつもクールで1匹猫の彼女が自ら仲良くなりたい人とは…メアリでなくても、気になってしまう。
「あ…の…あのね、メアリさん…もしかしたら、キリエのお肉屋さんのご子息とはお知り合い…なのかしら。…違うの!たまたまよ?たまたまいつ来ても弟さんがいらしてるって気づいたのよ。それで…もし良かったら…紹介して欲しくて…図々しいのは分かってる!無理なら断って!」
わー、美人さんは顔真っ赤にしてても綺麗ネ。何となく嫉妬するメアリ。…ん?クラスメイトの話!はっと我に帰って副長の話をよく聞く。
…メアリのファン、お肉屋の若主人には兄が居る事はメアリも知っていた。兄は店を継がず、家具屋として生計をたてているそうで、道は違えど2人の兄弟は仲が良く、時折互いの仕事を手伝っている。
「以前、サロンの受付カウンターをオーダーメイドした事があったの。とても優しい方だったわ。その好でたまに夜のメンズサロンにも来てくれるんだけど…仕事となるとダメなのよ…お近づきになりたいなんて心、お客様に失礼だもの…だから…ずっと一店員ってだけの関係のままで…」
「哎呀ーわかたヨー。…でもお店来てるならヤミィサン頼れば良かたのでワ?」
…真っ白になりながら、死んだ魚の目でメアリを見つめる副長。…んー…想像するメアリ…何か納得したようにサイダーを飲み込んだ。
うっかり景気よく引き受けてしまったが、冷静に考えてみる…私もクラスメイトの彼に声をかけなければならないではないか!ボン!と顔が赤くなる。ズルい!恥ずかしいのは副長だけじゃないのに!…とはいえ、約束した手前どうにもならない。精一杯頭を捻るが、悲しいほど何も浮かばない。哎ー!止めた!!心で叫ぶメアリ。そういえば肉まんの餡にするお肉がないんだっけ…買いに行かないと…ん?!メアリの目が見開く。
「やぱ、お近づくならお食事ヨー!!」
ちょうど彼の店へ行くのだ。メアリは水溜まりをスキップしながら買い物に出かけた。
数日後、夕日がゆっくりと帰っていき夜の帳が灯る頃、メアリの家はドアを開いて来客を待っていた。そこへ仕事を終えた副長が現れた。
「ふふ、嘉嘉の饅頭ディナーにご招待ありがとう。あの地域の食事は体にとても良いと聞いていたから嬉しいわ。これ、私からのお礼よ」
高そうなオシャレなシャンパンを抱えていた。とても楽しみにしていたらしく、わざわざ休みを調整してきてくれた。
「嬉しいネ!せかくだから、嘉嘉のドレス着るヨー!メアリのじゃないから、着れるはズ!メアリもオシャレするヨ」
姉弟子から貰ったがサイズが合わない高級チャイナドレス。副長は見事に着こなせた。メアリの頭には猫科の付け耳が蝶々の隣で愛らしく踊っている。ザッザッザッ…誰かが歩いてくる音がする。キョトンとする副長を他所に嬉しそうに叫ぶ。
「待てたヨ!欢迎、メアリのお家へー!」
ガタッ!ゆったり座っていた副長が立ち上がる。そこには虎の獣人の兄弟。2人とも髪は金髪に黒髪のメッシュ。ハツラツとして男らしい弟に、少し長い髪をひとつに束ねた、優しい顔の兄。商店街でも少し有名なイケメン兄弟である。副長どころか、今回の会食を目論んだメアリ自身も顔が真っ赤である。
(ちょっ!どういう事よ!??)
慌ててメアリに耳打ちする副長。説明する前に、弟が口を開いた。
「ありがとう、メアリ!兄貴がさ、ずっとサロンの副長さんとお話したいってボヤいてて!なかなか接客以外の会話ができないって悩んでたんだぜ!」
ウシシッと笑う弟の口を必死の表情で塞ぐ兄。なぁーんだ、相思相愛ネ!嬉しくなったメアリは早速熱々の蒸籠を開ける。さあ!楽しい食事会だ。
「冷静を装っていますがね、メアリさん。弟は貴女からのお誘いの後、上の空で仕事を何度もミスしたんですよ。着る服もなかなか決まらなくてね…僕からの囁かな仕返し。弟には秘密ですよ…」
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
兄弟と副長と共にパーティーを楽しみました。
Comment
No Comments Yet.