この手に溢れる想いを
宇多田ヒカル
この手に溢れる想いを
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無歌の花に飲み込まれたみりん。彼女の脳裏に見たこともない像が直接流れ込む。無歌の根元にいる人物の記憶だろうか…。
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お母様は小さな家の小さなベッドで横たわっていたわ。私の名前を呼んで、私の手を取って…つっと泣いていらっしゃった…。あぁ、あぁ!どれだけこの日を待っていたでしょう。お母様…手を伸ばせば貴女がいる…。
10日…とても幸せな時間でした。失った数十年を埋めるにはあまりに玉響の刻。でも、確かに通った親子の血と情…。彼女の棺にありとあらゆる花を詰めて、そして貴女の代わりとして私を導いたあの図鑑を添えて、彼女の旅立ちを見送ったわ。
泣いている私の後ろから、声がしたの。遅くなってごめんなさい。貴女と貴女のお母様を探すのに時間がかかったと…振り返ると老紳士…彼こそが手紙の主、そして彼こそ…
「まさか…そんな……旦那様…!」
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「私達が立っていられるのは、生きていられるのは…。私もつい己の強さに忘れてしまう。支えてくれる小さく尊い想い…私は、この身を懸けて守り抜く…消してはならない想いを!」
みりんの角が凍てつきはじめる。
集まった者達を次々飲み込んだ温室、突如ひとつの花が凍り始め、砕けた。そこには氷の青を目に宿したみりんが立っていた。
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無歌の花から解放され、園長の左腕に這った根が枯れ落ちました。
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