決戦スピリット
CHiCO with HoneyWorks/キャプション:あいまいえいみぃ
決戦スピリット
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#七色連歌 #出席番号ゼロ
相川真緒:想空葵
新人戦。
高校では確かにフレッシュさの残る一年生、新人と言って差し支えない。だけど、そこにいる大半は中学で大会を経験してきた奴らだろう。
力試し、一番を狙う、意欲じゃなく実力があった。
……なんて、理由は色々あるだろうけど。確かに、この空間にいるのは新人と呼ばれる、ある程度の力がある奴らだ。
そしてみんな、やっぱり勝ちたい。
中学最後の大会に出られなかった分、少しのブランクが作った得体の知れない何かを壊すには、十分な舞台かも知れない。とか、ちょっと茶化し気味に思いつつコートに立つ。
今ここに立っているのは、あの時、一緒に大会に出ようとしていた面子ではない。でも、紛れもなく今の仲間。
あの時、出られなかった大会。
……あぁ、今だけは忘れよう。
勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい。
勝ちたい。
勝ちたい、勝ちたい。
勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい。
勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい。
勝ちたい。
……勝ちたい、それ以外のことは全て。
あの時と同じことが起こるんじゃないかって、どっか怯えてる自分もいる。
それが?
勝ちたいなら、乗り越えるしかない。
会場に来る前に、朝、お守りの紐が切れてて縁起が悪かった。
それが?
ここまできたら神頼みなんかしない、実力勝負だ。
ギリギリ押されて時間も少ない、逆転なんてできないってムードに包まれる。
それが?
ブザーがなるまで、試合は終わらない。
殻を破ったフリで、いつまでも殻を被ってちゃあ強くなんかなれないって。少しだけ時間が経って、気付いたんだ。
怪我への恐怖。
相内が死んだことへの動揺。
……それから、俺じゃなくて良かったなんて思ってしまったことへの罪悪感。
全部、忘れない。でも、ぶっ壊してやる。
勝つんだ。
試合にも、記憶にも。
「っ……ピンチから引っくり返す。何だって、これくらいの方がドラマチックじゃん?」
指先から離れるボールが、床を打ち鳴らした。
3ポイントラインギリギリまで攻める。
あと数秒、スローモーションみたいに見えた。
ギュッと踏み込んで、邪魔される前に放り投げる。
ネットに擦れる音が聞こえた瞬間、けたたましくブザーが鳴った。
点差は、引っくり返った。
終わりのブザーは、これからの幕開けを知らせたんだ。
あれもこれも忘れないよう刻み付けた心は、ずっと痛みと付き合っていく。
でも、それさえ乗り越えてこそだと思うから。
なぁ、相内……俺、少しは強くなれたよな。
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