バカサバイバー
ウルフルズ/キャプション:榎戸世虎
バカサバイバー
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#七色連歌 #出席番号ゼロ
神童拓人:上野
腕前を見せてほしい旨を頼み軽音部の部室まで連れ、現在進行形で我々の魂まで揺さぶらんとする音色を響かせているこの男、神童佑__
彼の特徴を簡潔に表すとすれば
"天才的な馬鹿"
この一言につきるだろう。
同学年内だけに留まらず、他学年はおろか、教師陣にさえその名前を聴けばピンと来ない者はいないだろう知名度を持つ。
しかし皆は口を揃えてこう言うのだ。
「彼は良い奴だ」
決して深夜の道路を走り回るバイク乗りのようにガラの悪い輩でもなければ、一日中ひたすら机に向かって参考書とにらめっこするような真面目な奴でも、全ての言葉に一言二言で返事をするような無愛想で堅物な奴でもない。
足りないだけなのだ。
彼には、ただモノを頭にいれるだけの学が足りないだけなのだ。
誰とでも仲良くなれるほどのずばぬけたコミュニケーション能力の高さ、かなり練習したであろうギターの腕前。
たまに神経を逆撫でされるが、教師や上級生に構わず誰にでも打ち解けた態度で憎めない彼はまさに、世間の言葉を借りるとすれば、所謂"愛すべきバカ"という存在そのものだった。
突然演奏がピタリとやみ、そうだ、という顔をこちらに向けて彼は言い放つ。
「あ、歌も一緒の方がよかったっすかね?」
自分も含め、彼の歌の評判を知っている数名の部員は言葉通り、口を揃えて「歌はいい」と遠慮した。
何かあったら、ギターの助っ人を彼に頼むとしよう。
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