その優しい色は
Uru
その優しい色は
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無歌の花に飲み込まれたフィー。彼女の脳裏に見たこともない像が直接流れ込む。無歌の根元にいる人物の記憶だろうか…。
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お父様はお仕事での旅の途中、お亡くなりになりました。お母様は泣く泣く私を孤児院に預けました。どれだけ謝られたでしょう。あぁ、どうか頭を下げないでお母様…。貴女は何も悪くないのを私は知っているわ。
残念ながら私の預けられた孤児院は良い環境とは言えなかった。意地悪なルームメイト、怠惰な先生…生活は一変したの。でも、大丈夫よ。お母様が年に一度、下さる本を読むのが幸せ…特に綺麗な絵で綴られた植物図鑑…私の宝物。
見た事のない世界の光、青々した葉と美しい花…ああ、お父様とお母様…2人で見られたら…幸せでしょうね…
私、勉強して偉くなるわ。働いてお金を稼ぐの。いつかここを出て、私の手でお母様を迎えに行くの。今日もまた勉強道具をルームメイトに壊された…でも大丈夫。私の知識まで、彼らは奪えないでしょ?
「いつか、必ず私は…陽の当たる世界へ…」
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「ああ…園長…私は貴女の過去に触れたことなんて…ただ与えられた優しさだけ受け取ってた…。救われたんです。私も…海に消えた彼女も…!お願い!私達の大事な人を返して!!」
フィーの指先から緑が芽吹いた。
集まった者達を次々飲み込んだ温室、突如ひとつの花から色とりどりの植物が生えだし、朽ちていった。そこには草萌ゆる緑を目に宿したフィーが立っていた。
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無歌の花から解放され、園長の胸に這った根が枯れ落ちました。
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