それは小指が触れる様な
aiko
それは小指が触れる様な
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無歌の花に飲み込まれたヤミィ。彼の脳裏に見たこともない像が直接流れ込む。無歌の根元にいる人物の記憶だろうか…。
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何日も歩いて、街の外にも出た。魔族に襲われて死にかけた事もあったけど、私は転移のカミツキで何とか逃れ逃れ進めたわ。でも…もうダメかしら…図鑑に乗ってる木の実を食べて凌いで来たけれど…もう、体が動かない…お母様…もう一度…
…おい!大丈夫か!…お、お嬢さん!!
目を覚ましたのは3日後、孤児院で1日だけお話した男性が、仕事で街の外を歩いていて私を見つけてくださったの。献身的に看病してくださった。事情をお話すると、彼の御屋敷で働かせて頂ける事になったわ…庭師…。本を頂いた時のように私の胸は踊ったの。貿易を生業とする彼のお庭は私の図鑑を現実世界に表したかの様…。私の知識に、旦那様も興味深く耳を傾けてくださったわ…。
「あぁ、この心に浮かぶ火は何かしら。温かい…。ずっとこのままで…」
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「…ねえ、悲しみも、乗り越えて見つけた小さな心の火もそれは尊く美しい色に満ちているわ。まして、これだけ幸せな記憶…これは彼女の聖域、踏み躙る事は私が許さない…!」
ヤミィの手には焔が灯った。
集まった者達を次々飲み込んだ無人の温室、突如ひとつの花がメラメラと燃えだし、灰となって朽ちた。そこには燃え盛る炎の赤を目に宿したヤミィが立っていた。
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無歌の花から解放され、園長の右腕に這った根が枯れ落ちました。
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