会える日の為に
HoneyWorks (Ft.sana)
会える日の為に
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デート以来、時々街で見かけては適当な場所を見繕ってお喋りやお茶をする様になった2人。理事会員とメイクサロンの店長…身長も種族もなんだか凸凹。でも不思議と2人が話す姿は収まりが良い。そういえば…ヤミィが話題を変える。
「実はやってみたいアイディアがあってね。その名も魔法のコスメ!どうかしら?」
魔法の!??シノは興味津々で身を乗り出す。コスメの草案を話すとシノは溜息をつく。
「なんて素敵なのぉ!可愛くなって強くなれる魔法のメイク…すっごく素敵です!絶対流行りますよ!だって…私が今受けたいくらいだもの」
顔を赤らめて微笑むシノの首元に光が見えた。小さな花のペンダント。そういえば…デートの時も付けてたな…余程大事なものなのかしら。
「案が通ったら絶対行きます!お忙しい中大変かもですけど…すごくすっごく期待してます!」
語尾に力入れる癖、ニフに似てきたな…そう思いつつ、キラキラ光る期待の眼差しに感謝を述べた。ヤミィが副長に提案する前日の一幕、夕暮れのカフェでの話だ。
「ふふ、やっと来たわね?私のデイジー」
仕事の休み、少しオシャレをしたシノがコスメを頼みにやって来た。約束ですもの!満面の笑みに三つ編みが揺れる。
「次の週には理事会の総会があるんです。いつもニフ先輩だけの出席でしたが、シノちゃんもって連れて行ってくださるんです!だからちゃんとした格好で行かないと…そのメイクをお願いします」
あーフォーマルメイクね…と一旦は納得するヤミィ。しかし、仕事の会議にしては妙に嬉しそうだ。いくら仕事を前より頼まれる様になったとはいえ、そこまで嬉しいだろうか…?キラッ…首元でまた同じ光がチラついた。
「そのアクセサリー、お気に入りなの?いつもつけてるわよねぇ?」
「へ?…え、あ、へへっ!そ、そうなんです。お気に入りなんです…はい」
あれだけ元気だったシノがごもごもと口篭る。なんか怪しい…というか、きっとそうだろうな…
「彼からのプレゼントかしら?」
「いいえ!まだ彼では…ムグッ!!!」
やってしまった!髪に負けない程真っ白い顔のシノが口を塞ぐが後の祭り。ニンマリ顔のヤミィにしっかりロックオンされてしまった。
「どーりでおかしいと思った。ニフなんて祭典の時ですらちゃんとメイクなんてしないのに…ふーん、きっとその総会に王子様がいるのねぇ?…水臭い!デートまでしたのに…意中の人がいるなんて面白、じゃない素敵な話秘密にするなんて!」
今日はワイルドな切れ長アイラインと奇抜なリップがアクセントの雄々しいメイクのヤミィが乙女のように体をくねらせ、わざとらしく悲しむ。ごめんなさい!ごめんなさい!!と顔に火のついたシノがペコペコと頭を下げる。
「…だーめ。許せない!から許さない。罰としてメイクは自分でする事!ね?」
パッチングテストとカルテを机にドンと置く。
「彼は自力で射止めるの!手伝ってあげるから、自前のメイクで彼に褒められてきなさい!」
それから様々な質問やパッチングテストをしたが、恥ずかしさと自分のメイクで先輩に会わねばならない緊張で、シノは上の空…ヤミィが何をしたのか、帰りには覚えていない程だった。
その日以来、鏡を見ては溜息をつく日々…自分でメイクかぁ…頭の中はその事でいっぱい。酷い顔だと苦笑する先輩を想像しては苦悶し、可愛いと褒められる想像をしてはニヤニヤし…ニフが本気でシノを心配していたが、その異様さに声をかけられずにいた。刻一刻と総会が近づく。ヤミィさん…連絡まだかな…ソワソワするシノの元にお待ちかねの一報。明日の早朝、サロンへいらっしゃい☆
シノは早起きすると身支度を整えてサロンへ向かった。
「おはようございます!」
「合格!…ふふ、その笑顔は最大の武器よデイジー。清楚な白菊のよう…挨拶からもう戦いは始まってるんだから!気を引き締めていきなさい!」
よく分からないが褒められているようだ。シノの肩を後ろから掴んでさっさと椅子に座らせる。目の前には約束のコスメ。
「さ、ここまではしてあげたから、これからは自分で頑張るのよ?まず下地は…」
さすがプロ…独学でやったメイクとは雲泥の差だ。綺麗に顔を整えると、ついに本番。
「シノは水の相性が強かったわね。憑神より強い水の性質…特に淡水と相性がいいわ。ピンクの下地に水のアイテムを散りばめるわよ!水龍の鱗が入った青みのチークをスっと広げて…そうそう、可愛くなりすぎないように品よく…上手いわ!後はウィンディーネの涙が入った透明のグロスを少したっぷり目に…いいわぁ!愛らしさの中に色っぽさが出てる!シノ、才能あるわね!」
褒め上手だなぁ…と謙遜しながらも嬉しくて笑みが零れる。鏡の前には少し大人っぽい自分。全部自分で塗り上げたメイク。
「水の攻撃を軽減するのは勿論、ほんの少しだけど精神のすり減りを軽減するわ。魔法を長く使っても疲れにくくしてくれる。最後に…」
独特の容器の練り香水を首にほんの少しだけ足す。一気にオリエンタル調の香りが広がる。
「これはおまけ。トートは砂漠の国の神様なのよ。つけても付けなくてもいいけど、もし2人きりのデートができる日が来た時は…異国の香りを纏って彼をドキッとさせても面白いかもね」
パチン!とウインク。ふふ、決まったわ!と満足するヤミィだったが、2人きりのデート…そのワードに、頭の先まで真っ赤になったシノには残念ながら届いていないようだ。
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総会で、先輩に褒められました。
(ヤミィのサロン 売上4)
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